書評

現代なら、ダメンズにつかまるタイプ

文: 小日向えり (タレント・エッセイスト)

『ゆけ、おりょう』(門井慶喜 著)

『ゆけ、おりょう』(門井慶喜 著)

 また、お仁王のあだ名をもつくらい勇ましい乙女姉さんが大好きな龍馬も、姉のような男勝りの女性がタイプだからこそ、おりょうさんはストライクだったんでしょう。二人はラブラブで、白昼堂々と、人前で手を繋いで歩いたといいます。女性は三歩後ろをついて歩くのが普通な、男尊女卑の当時では考えられません。龍馬もおりょうも、常識にとらわれない豪快さがあり、似た者同士で気が合ったんですね。門井さんも、「龍馬が現代に生きていたらSNSで発信するタイプ」とお書きになっていますが、なるほど! カップルとしても時代の先取りをしていたわけです。

 高千穂峰山頂にある「天の逆鉾」を二人で引き抜いたというのも、私の大好きなエピソードです。慌てて止めに入ろうとする薩摩藩士の田中吉兵衛の言うことも無視して、鉾の根元を掘って「一、二の、三!」で抜いてしまい、興奮して大笑いする二人。日本神話に登場する宝を、自分の子供時代の幸福の象徴として覚えていたおりょうが、おもちゃのような実際の逆鉾を「抜いてしまいましょう」と龍馬に言った気持ちがわかるような気がしました。

 龍馬とおりょうは、「英雄と、その英雄を支えた立派な妻」ではないんです。

ゆけ、おりょう門井慶喜

定価:本体760円+税発売日:2019年08月06日


 こちらもおすすめ
別冊文藝春秋『空を拓く』門井慶喜――立ち読み(2017.10.19)
書評肩の力を抜いて楽しめる、美術と歴史のワンダーランド(2017.08.17)
インタビューほか伸びやかに輝くおりょうの一生(2016.10.07)
コラム・エッセイ万城目学さんが繰り出す機知のひらめき(2015.06.02)
インタビューほかミステリーと歴史の融合(2015.02.17)