――石田さんが幼かったころはアニメは子供のものだったと思うのですが、いまは大人もふつうに楽しんでいますよね。
それは日本の少年文化の伝統でもあるんですよね。漫画家も最初は映画監督になりたいという人が多かったんです。でも、お金の面もふくめて映画を撮ることは難しいので少年漫画を描き始めることになりました。ディズニーのように最初から子供限定で残酷なシーンやお色気シーンはダメというものではまったくなくて、日本の少年漫画は最初からどちらも入っているのが基本でした。その意味でも、日本の漫画やアニメはずっと大人向けだったんじゃないんですかね。自分と同じものを面白いと思ってくれる人に向けて真剣につくっていたのですから。
――最近、SNSなどでエンターテインメントで政治的、社会的なものを扱うことへの抵抗感を示す意見が散見されるように思います。そのなかで一貫してそのようなトピックを扱ってきたIWGPがアニメ化されることはどのようにお考えでしょうか。
そこに関しては、政治や経済が人間社会に大事なのはわかりますけど、それらの比重を少し上に置きすぎですね。政治も経済も文化も、あるいは日々のご飯も全部フラットな扱いで良いんです。芸能人が政治を語っても何の問題もないですし、政治家だけに任せておけるほど政治はちゃちなものじゃないですよね。
日本のアニメで考えてみると、日本のアニメは常にファンタジーだったり、狭く閉じた学園の話でしたので、リアルな社会の事件を描いたことはあまりないと思うんです。それをIWGPでほぼはじめて取り組めるというのは楽しみではありますね。まだフレッシュさの残るあの事件、この事件をどのようにアニメ化してくれるんだろう。どんなふうにアニメでいまの日本の社会の問題が描けるか、というのは期待したいところですね。アニメももうちょっと大人になっていいですよね。そういった意味でアニメの入り口を広げたいです。
――アニメのキャラクターにご希望はありますか?
あまりないです。とにかくシャープで格好いいものにしてほしいと思います。結局、ぼくたちが何かを見て「あっ!」と思うのは、すごく格好いいか、すごくかわいいかのどっちかなんですよね。アニメの最大の武器はそのふたつなので、そこをうまくついてくれるといいな。あと作者としては、たまに出てくる女性キャラがうんとかわいいと嬉しいです。
――今後、IWGPでアニメにからめたエピソードを書かれる可能性は?
あるとは思いますけどね。いま声優というのがまったく新しい仕事として出現しているので、声優さんを主人公に何か書いてみたいなって気はしています。まだアイデアは何もないですけど、短いお話ならいいんじゃないかな。
――最後にアニメからIWGPの世界にふれる読者に向けてのメッセージをお願いします。
池袋の街を舞台としてマコトやタカシのような若者が冒険しながら活躍する話なんですけど、それを通していまの日本のありかただったり、いまの時代だったり、社会の変化を読み取ってくれると書き手としてはすごく嬉しいです。でも、そんなことを難しくいう前に小説を読む楽しみをみんなに思い出してほしいです。ちょっと時間があるときに「IWGPのエピソードを1本だけ読んで行こう」みたいな。小説ってもっともっとカジュアルなもので良かったんですよね。そういった本を読む楽しみを思い出してくれたらいいと思います。
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