『はんぶんのユウジと』(壇 蜜 著)

――ねじ伏せて来る相手を怒り、何とか自分の持ち場を作るんじゃなくて、ねじ伏せられていい、損してもいいと割り切るんですね。

 壇蜜 はい。怒りの刃は常に内向きです。

――その刃をよく磨く。

 壇蜜 磨く。よく刺さる(笑)。

――なんだか、すごいですねえ。刺さる、といえば、第一話で、未亡人のイオリが、夫の遺骨を半分家に持って帰り、別の容器に移す場面で、壺の底に残った白い粉になった骨が、シンクにサッと飛び散る場面は鮮烈でした。

 壇蜜 大学病院で遺体を解剖する現場にいましたので、骨の気持ちは、よく表現できたなと思います。本来なら、見なくてもいいものをいっぱい見てきました。そんな時間を過ごさせていただいた施設には感謝しかありません。

――来年で四十歳ですね。

 壇蜜 四十は母方の祖父が亡くなった年です。糖尿病が劇症化して、ポックリ逝ってしまいました。だから、一応四十まで生きることがすごく大事なことだな、と思ってきました。

 結婚していなかったり、一軒家を持っていなかったり、子どもがいないとか、祖父と比べたらまだまだのところがいっぱいありますけど、まずは四十歳近くまで無傷で生きてこられたことに感謝しながら、墓でも磨いて、また新しく生きていこうかなって思います。

――最後に、これからの読者に対してメッセージがあったらお話しいただければ。

 壇蜜 読みやすいです。漢字に仮名もふってあります。表紙は有名なイラストレーターさんなので、インテリアにもよし。以上です(笑)。

(十月二日収録 聞き手・構成 鵜飼哲夫)


壇蜜(だん・みつ) 一九八〇年生まれ。二〇一〇年にグラビアアイドルとしてデビュー。映画『甘い鞭』で一四年に日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。著書に『たべたいの』『壇蜜ダイアリー』『死とエロスの旅』など。

文學界 12月号

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