- 2019.11.27
- インタビュー・対談
激動の時代を乗り越えろ! 「国家再建」「経済再生」「地方復興」を成し遂げた奇跡の主従の物語。
「オール讀物」編集部
『わが殿』(畠中 恵・著)
ジャンル :
#歴史・時代小説
幕末に国の経営が黒字だった藩はたった二つ!?
――畠中恵さんはデビュー以来「しゃばけ」「まんまこと」など江戸の町を舞台にした人気シリーズはもちろん、明治期の「若様組」シリーズや現代ものまで幅広い作品を書かれていますが、最新刊『わが殿』は、初めての幕末歴史小説にチャレンジされています。
畠中 以前に「実在の人物を書いてみませんか」という提案を、編集さんからされたことがあって、そこで色んな新しいことをやっていきたいし、いつか史実に基づいたものも書いてみたいですね、とお答えしたんです。
なかなか「この人を書けたら!」という方に出会えないまま、別の資料を読んでいたところ、江戸から明治への移行期に黒字だった藩が二つしかなかった? という記述に目が留まりました。気になって調べてみると、一つは塩田を持っていたことが黒字の理由で、もう片方が大野藩でした。たった四万石の小さな国にもかかわらず、いったいどんな人物がいて、どんな藩だったのだろうとすごく興味が湧いてきたのが『わが殿』の執筆のきっかけですね。
――大野藩を最初からよくご存じだったわけではなく、幕末に黒字だった藩、ということで興味を持たれたわけですね。
畠中 はい、その時に初めて大野の名前を知った、みたいな(笑)。そこからどういう人で、どういう藩だったんだろう、と……そこから資料を調べはじめて、莫大な赤字を抱えた幕末の大野藩の財政を立て直すため藩政改革を断行しようとする藩主・土井利忠と、その殿に登用されて財政改革の実務を担った内山七郎右衛門という名臣に辿り着き、この二人の関係性にもどんどん惹かれていきました。そこで地方紙の新聞連載の依頼をいただいた時に、前からやろうとしていた新しいことを、きちんと調べて書いてみようと、『わが殿』がスタートしたんです。