藤原智美さんは、この本で告白しています。「ここ数年、ことばにつまずいて、書くこと、読むことがスムーズにいかなくなりました」と。藤原さんほどの人でもそうなのかと驚きましたが、「しかし、これは医学的な『症状』ではなく、社会的『現象』なのかもしれない」と分析しています。
インターネットの普及で、一瞬にして膨大な情報を得たり、だれもが発信できる新しい言語空間ができ、そこで自由自在につながっている人たちもいますが、逆にそこで新しい言語や思考のしくみをのみこめず、うろたえている人も多いのです。
「紙とインクのことばに慣れ親しんできた人ほど、電子ネットワークがひき起こす思考の亀裂に落っこちてあがいています」と藤原さん。
おお、わが意を得たり。藤原さんが5年も前に指摘していたことが、そのまま今私たちの身の上に現象として現れているのです。私は、この本の内容の一部を彼らに伝えました。
「近代は、書きことばが歴史をつくってきたけれど、グローバルネットワークの誕生によってネットことばが躍(おど)りでてきた。今は『書きことば』から『ネットことば』へと、500年に一度のことばの大転換期らしい。その変化が、無意識のうちに私たちの認識や思考の方法も変えている。スピード最優先、来たメールには即・返信。おのずから文章は短くなり、推敲(すいこう)や検証はないがしろにされ、ことばは劣化してきている。書くだけでなく、読む力も衰退して、長文を読めない人が増えているそうだ」と。
そうか、そうだったのか……一同深く納得したものです。
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