![火災焼失した首里城で松本清張賞作家が考えたこと(2)](https://b-bunshun.ismcdn.jp/mwimgs/5/3/1500wm/img_538a808f4f38e50f463df3e52495afb3804438.jpg)
あの美しい正殿をもう一度見上げたい
トークイベントは盛況だった。首里城という大きな存在を失った人たちの、心の隙間を埋めたい情動があるのではないか、と関係者のどなたかがおっしゃった。「わからなさ」を抱えたぼくの話が、来場された方のその気持ちに応えられるものになっていたかどうか、心もとない。
ひとりで勝手に悩みながらも楽しい旅であり、無名のぼくにとってはとても晴れやかなイベントだった。招いてくれた上里さんやスタッフのかたがた、イベントに来場くださった皆様の温かさのおかげであり、この場を借りて心からお礼を申したい。本当にありがとうございました。
![](/mwimgs/b/9/1000wm/img_b90c2c3ec263a59175e40667cb4538b6618818.jpg)
そして、ぼくは「わからなさ」を抱えたまま自宅のある京都へ帰った。やはり寒く、リュックからパーカーやセーターを引っ張り出した。
あの美しい正殿をもう一度見上げたい、と望むくらいはよいのではないか。そう思えるようになったのはやっと数日後で、ぼくは風邪を引いていた。寒暖差にやられたらしい。
プロフィール
川越宗一(かわごえ・そういち)
1978年生まれ、大阪府出身。2018年『天地に燦たり』で第25回松本清張賞を受賞しデビュー。2019年8月刊行の『熱源』で第10回山田風太郎賞候補、第9回本屋が選ぶ時代小説大賞受賞。
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