- 2019.12.27
- インタビュー・対談
芥川賞作家が選んだ「寅さん」からの言葉──心に沁みる154のメッセージ
滝口 悠生
「男はつらいよ お帰り 寅さん」12月27日本日公開!
ジャンル :
#ノンフィクション
二〇一八年の夏、「男はつらいよ」シリーズの新作が制作される、という驚きの発表があった。いったい誰がそんなことを予想できただろうか。たまたまアメリカ滞在中にそのニュースを知ることになった私は、なにかの間違いか、それともこれが噂のフェイクニュースか? とにわかには信じられなかった。
しかしそれは本当だった。年末には「撮影順調」の報が届き、そして今年(二〇一九年)、とうとう新作にして記念すべきシリーズ第50作「男はつらいよ お帰り寅さん」が公開される。本書は、その新作公開を記念して企画された同シリーズの「名場面集」である。
過去全四十九作の名場面は数限りない。全部挙げていたら辞書のような分厚い本になってしまう。選者としてはそれでもいっこうに構わなかったのだが、出版社としてはやはりそうもいかないらしく、全作の完成台本を読み通してまず五百ほどピックアップした場面やセリフから、最終的に百五十ほどに絞り込んでいく形になった。
ここでは簡単にその過程や経緯を記したいが、その前に選者のことをご存知ない方も多いと思うので自己紹介をしておくと、選者は幼少期から「男はつらいよ」シリーズに触れ、二十代よりシリーズ全作を繰り返し観続けてきた、いちファンの小説家である。二〇一五年に「男はつらいよ」をモチーフにした『愛と人生』(講談社)という小説を発表し、単行本刊行時には山田洋次監督に帯文をいただく僥倖にも与(あずか)った。そんなご縁もあって今回光栄にも選者の役を仰せつかったのだが、書くこと、そして読むことを仕事としている者にとって、「男はつらいよ」全作を文字で読む、という経験は大変おもしろい経験で、映像で楽しむのとはまた違う新鮮な喜びと楽しみがあった。そしてたくさんの発見もあった。
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