本の話

読者と作家を結ぶリボンのようなウェブメディア

キーワードで探す 閉じる
芥川賞作家が選んだ「寅さん」からの言葉──心に沁みる154のメッセージ

芥川賞作家が選んだ「寅さん」からの言葉──心に沁みる154のメッセージ

滝口 悠生

「男はつらいよ お帰り 寅さん」12月27日本日公開!


ジャンル : #ノンフィクション

『いま、幸せかい? 「寅さん」からの言葉』(滝口悠生 選)

 最後に、若い読者や「男はつらいよ」を観たことのない読者のために、同作の概説を付しておきたい。

「男はつらいよ」は山田洋次原作・監督による日本を代表する喜劇映画のシリーズである。一年中旅暮らしの「フーテンの寅」こと車寅次郎が旅先で出会う女性に恋することを繰り返し、故郷の東京葛飾柴又は帝釈天の参道で「くるまや」(第39作までは「とらや」)という団子屋を営む家族らが寅の起こす騒動に巻き込まれる。寅の恋はいつも実ることなく失恋に終わり、妹のさくらをはじめ家族の苦労と心配は絶えない。シリーズを追うに従って、さくらの息子(寅の甥)満男もまた、寅の背を追うように旅と恋を繰り返す。

 元は一九六八年から六ケ月間、フジテレビで放送された渥美清主演のテレビドラマ版「男はつらいよ」が好評を博し、一九六九年に劇場版の映画「男はつらいよ」が公開された。こちらも大ヒットとなって、すぐに次作「続 男はつらいよ」が制作され、その後、盆と正月の年二回公開のペースでシリーズ化していく(一九九〇年からは正月公開の年一回ペースに)。

 テレビドラマ版から劇場版に移るに際しても、また映画シリーズ化の過程においても、主な登場人物を演じる俳優には様々の変化がある。たとえばテレビドラマ版では長山藍子と井川比佐志がさくらと博士(ひろし)を演じ、おいちゃん役はシリーズを通して三人(森川信、松村達雄、下條正巳)が演じている。やはり途中(第27作)から満男役を演じた吉岡秀隆はシリーズ終盤においては物語の中心を担い、寅とともに二枚看板を背負うかたちになる。そのような変遷のなか、変わらなかった、いや、変えようがなかったのが主演の渥美清=車寅次郎という存在である。

文春新書
いま、幸せかい?
「寅さん」からの言葉
滝口悠生

定価:880円(税込)発売日:2019年12月18日

プレゼント
  • 『赤毛のアン論』松本侑子・著

    ただいまこちらの本をプレゼントしております。奮ってご応募ください。

    応募期間 2024/11/20~2024/11/28
    賞品 『赤毛のアン論』松本侑子・著 5名様

    ※プレゼントの応募には、本の話メールマガジンの登録が必要です。

ページの先頭へ戻る