- 2019.12.27
- インタビュー・対談
芥川賞作家が選んだ「寅さん」からの言葉──心に沁みる154のメッセージ
滝口 悠生
「男はつらいよ お帰り 寅さん」12月27日本日公開!
ジャンル :
#ノンフィクション
一九九六年、渥美清の死去を受け、テレビドラマから数えて二十七年続いた「男はつらいよ」シリーズは途絶えることになる(翌一九九七年「寅次郎ハイビスカスの花」の前後にわずかなカットを加えた「特別篇」が公開されている)。
日本の、いや世界の映画史を見ても、俳優と役柄がここまで一体化して、分かちがたくなってしまった存在はいない。ファンだけでなく、多くの日本人にとっても、渥美清の死は寅さんの死とイコールだった。
だからこそ、本稿冒頭に書いた新作制作の報にふれ、誰もが驚いたに違いないのだ。そして同時に、往年のファンの心中にはいくらかの不安がわきもしたかもしれない。つまり、その「新作」には渥美清演じる車寅次郎の新しい姿は存在しえない。それを本当に「新作」と呼べるのか。たとえばその「新作」とは、これまでの作品の様々な場面を組み合わせ、コアなオールドファンを懐かしませるための「名場面集」とか「総集編」みたいなものではないのか。それを我々は心から祝福し、楽しめるのか?
──新作の試写を観て、右のような不安は簡単に退けられた。それは紛れもない「男はつらいよ」の新作であり、そこには過去の寅さんの姿とともに、くるまやの人びとや、満男の姿を通して、ちゃんと新しい寅さんの姿が映し出されていた。
記録的な映画シリーズを残しただけでなく、四半世紀のブランクを挟んだ新作でその作品世界を復活させた山田洋次監督、そしてこの映画にかかわった方々の創造力は、本当にすごいものだと思う。
本書が「男はつらいよ」の新作の完成と公開を寿ぐとともに、若い読者がこの作品の魅力に出会う一助となることを願っている。
長年のファンも、未見のビギナーも、ゆっくりと文字を読み、この映画の言葉を味わってみてほしい。そして心をひかれた場面や言葉があれば、ぜひその一本を観てみてほしい。そこにはきっと、また別の名場面がたくさんあるはずだ。
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