なぜ、いじめは起きてしまうのか。
学校という閉鎖的な空間、思春期という時期など環境も関係しているだろう。
しかし、井上さんはもっと奥深いところに原因があるのではないかと指摘する。
「いじめの問題は思春期に限ったものではなく、社会全体に原因が潜んでいると思います。昨今は“勝ち組”“負け組”という価値観が社会に浸透し、みんなが『勝ちたい』『上に立ちたい』と思っている気がします。『いま勝っておかないと、この先ずっと負け続ける』という強迫観念のようなものを持っている人も多い。“勝ち負け”という考え方が、学校という世界での“いじめ”に繋がっているのではないでしょうか」
「いじめは絶対的な悪である」ことは大前提。その上で、井上さんは“いじめられる側”だけではなく、ルエカや担任教師の視点も描き、それぞれの抱える事情や思いに切り込んでいく。
「“いじめる側”にも、それなりの理由や背景があるはずで、ただ単に『いじめる子は悪い子なんだ』とはしたくなかった。教師も同様です。いじめの問題が起きると、学校は『知らなかった』の一点張りのことも多い。それに対して『ひどい学校だ』と批判することは簡単です。でも教師の側には、いじめを見て見ぬふりをするしかない事情があったのではないか。決して擁護するわけではありませんが、ひとつの事実として、ルエカと教師の視点は書いておきたかった」
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