成田本店みなと高台店 櫻井美怜さん
自分のことは自分自身が一番わかっているようで案外そうでもない。折り合いをつけられずに持てあましてしまうのは他人との距離ではなくて自分との付き合い方ではないのかと最近思うようになった。大人の私でさえそうなのだから思春期ならなおのことそうだろう。
読めば大人の私達の心もやわらかくあたたかな羊毛でくるまれる読書の喜びを感じられる愛情あふれる作品だった。
精文館書店中島新町店 久田かおりさん
いま、私の心は、ふわふわで温かいもので満ち溢れている。やさしく温かい涙を何度もこらえて読み終えたこの一つの物語は娘と母の、妻と夫の、息子と父の、そして孫と祖父のどうしようもなく複雑でだけど一度切れたとしても何度でも 紡ぎ合わされる糸のような関係そのものだ。いじめで学校に行けなくなった美緒が祖父が作り出す羊毛の布の中でゆっくりと癒され自分を見つめなおし成長していく物語なのであるが、実は母親であり妻でありどこまでいっても娘のままである美緒の母親真紀の自立の物語でもあった。父と息子、母と娘、距離の近い同性であるがゆえにぶつかりあい分かり合えないその関係。そこに現れた裕子と太一。母と息子という異性の親子がもつれてこじれた関係を解きほぐしていく。いや、そんな小難しいことは何も考えなくていい。ただただ美緒におじいちゃんがいてよかった。裕子がいて、太一がいてよかった。父ではなく、母でもなく、友達でもない、この「家族」との距離が美緒のこんがらがった頭の中を少しずつほぐしていってくれるその時間をいつくしみたい。ホームスパン。今まで知らなかったその布を私も身にまといたい。大切に洗われほぐされ 紡がれ染められ織られていくその布に包まれたい。そして思う。自分なら何色に染めるだろうか。どんな決意でもってその色を選ぶだろうか。
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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