書評

“座談の名手で人たらし”司馬さんがしばしば口にしていた「たとえ話」

文: 白川 浩司 (元編集者)

『余話として』(司馬 遼太郎)

『余話として』(司馬 遼太郎)

 この年、韓国では金泳三(キムヨンサム)新大統領が就任した直後で、旧知の岡崎久彦氏を通じて、岡崎氏とのインタビューを掲載してくれないか、と申し入れがあった。余談だが当時の韓国では、植民地時代の名残か、『文藝春秋』がまだ毎月一万部近く売れていたという。そのため、『文藝春秋』に登場することが政治家として一つのステータスになっていたのか、あるいは日本国民に訴えるには、この雑誌を通じてメッセージを発することが最も効果的と判断されたのか、おそらくその両方だったのだろう、韓国の政治家から売り込まれることが時々あった。前任の盧泰愚(ノテウ)大統領など、在任中二回も登場している。そのうち一回は、司馬さんとの対談である。

 だが、新大統領インタビューが同じ話の繰返しになるなら、今さらやる意味はない。が今回は、「従軍慰安婦問題など、事実関係は認めてほしいが、新たな補償要求はしない」との条件が付いていたので、掲載することにしたのだ。

 インタビューを終えて帰国した直後、司馬さんと会食する機会があった。実は韓国の古いエリート層(日本語世代)には、愛読書は何かと問われると「司馬遼太郎」と答える人が多い。金泳三氏のみならずその前の盧泰愚氏も、愛読書は「司馬遼太郎」である。その辺を導入部に、話は広くアジアの指導者論に及んだ。

余話として司馬遼太郎

定価:本体650円+税発売日:2020年02月05日


 こちらもおすすめ
特集面白いのは当たり前、賢い女なら“活用”しよう! アラサー女子に贈る“司馬本”7つの楽しみ方(前編)(2016.02.02)
インタビューほか北大路欣也 『竜馬がゆく』から始まった(2016.02.01)