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今村翔吾「私が追いかけて来たテーマの、核になる物語かもしれない」

今村翔吾「私が追いかけて来たテーマの、核になる物語かもしれない」

別冊文藝春秋

新連載『海を破る者』に寄せて

出典 : #別冊文藝春秋
ジャンル : #歴史・時代小説

「別冊文藝春秋 電子版30号」(文藝春秋 編)

 この二人は一族の骨肉の争いに人生を翻弄された。身近な人たちとですら解り合うことが難しいことを痛感していたはずである。私は作家になる以前、父の会社で働いていたことがある。その中でたとえ身内といえども解り合うことが難しいことを知っている。それでも解ろうとし、解り合えない。そのジレンマに相当苦しんだ。いわば戦争とはその国家版ともいえるのではないか。身内にすら絶望した男たちの一方がそれに臨み、もう一方は踊念仏で人との繋がりを見つめる。むしろ解り合えなかった後悔が強かったからこそ、解り合える可能性を追い求めたのだと思う。今の私もまた、小説というもので人と人の繋がりとは何ぞやということをずっと見つめ続けている。それはこれまでも私の書く小説のテーマの核にあったし、今回の「海を破る者」こそその一つの答えになるのではないかと予感している。

 東京オリンピック・パラリンピックに続き、大阪万博、これから人口が減少するなかで移民のことも取り沙汰され、いやがおうにも世界の中の日本、人と人の繋がりを意識せねばならない時代を迎えている。そのような時世を私たちはどう生きるのか。それを考える意味でも、今この物語を書くことは必然だったのかもしれない。

 さて面白くなってきた。この人類史上空前絶後の帝国を、伊予の片田舎に生まれ、人に一度絶望した二人の男が如何に見るのか。私自身もまだ解らない。ただ彼らと共に私も一つの答えに辿り着くと確信している。


撮影:深野未季 取材協力:長崎県庁/松浦市立埋蔵文化財センター


「海を破る者」の立ち読みはこちら

別冊文藝春秋からうまれた本

電子書籍
別冊文藝春秋 電子版30号(2020年3月号)
文藝春秋・編

発売日:2020年02月20日

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