インタビューほか

【映画化決定!】戦争の英雄が連続銀行強盗犯に 全米で話題の自伝的小説が登場

黒原 敏行 (翻訳家)

『チェリー』(ニコ・ウォーカー)

『チェリー』(ニコ・ウォーカー)

戦争とドラッグと犯罪。破滅するしかなかった青年を痛ましく描き出す犯罪文学。「アベンジャーズ」の監督で映画化も決定しました。この本の訳者 黒原敏行さんによるあとがきを特別に公開します。


 アメリカのオンライン・メディア、バズフィード(BuzzFeed)の「戦争の英雄はいかにして連続銀行強盗犯になったか」(How A War Hero Became A Serial Bank Robber)という記事を閲覧すると、まず目に飛びこんでくるのが、銀行の監視カメラに写った強盗犯の画像だ。帽子とマフラーで顔を隠し、拳銃を窓口係に向けている男。それがこの小説の作者、ニコ・ウォーカーだ。

 ニコ(ニコラスの愛称)・ウォーカーは一九八五年生まれ。大学を中退し、陸軍の志願兵となり、二〇〇五年から〇六年にかけてイラクで衛生兵として勤務して、七個の勲章をもらう働きをした。

 周知のとおり、二〇〇三年三月に始まったイラク戦争は、正規軍同士の戦いとしては一ヵ月余りで終結したが、そこから二〇〇七年あたりまでが米兵戦死者の増大した時期だった。いつ即席爆発装置(IED)で吹き飛ばされるかわからない日々を送ったウォーカーは、帰国後、重度の心的外傷後ストレス障害(PTSD)に悩まされた。ヘロインと麻薬(オピオイド)系鎮痛剤の中毒となり、二〇一〇年から一一年にかけての四ヵ月間に十件の銀行強盗で計四万ドルを奪い、十一件目で逮捕された。二〇一二年に禁錮十一年の刑を言い渡され、現在も服役中で、仮釈放されるのは二〇二〇年十一月の予定だという。

チェリーニコ・ウォーカー 黒原敏行

定価:本体1,950円+税発売日:2020年02月20日


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