- 2020.02.20
- インタビュー・対談
【映画化決定!】戦争の英雄が連続銀行強盗犯に 全米で話題の自伝的小説が登場
黒原 敏行 (翻訳家)
『チェリー』(ニコ・ウォーカー)
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
トビー・キースはカントリーのシンガー・ソングライターで、『赤、白、青のご好意で』は九・一一テロを契機につくった愛国歌だ。俺の死んだ父さんは愛国者だった、その父さんが愛した国を卑怯な騙し討ちで攻撃した奴らは赦さない、赤、白、青(星条旗の色)のご好意で、貴様らの上に爆弾が雨のように降るだろうぜ、という内容だ。イラク戦争に関してカントリーの女性三人組バンド、ディクシー・チックスがブッシュ大統領を厳しく批判すると、キースはこれに反発し、両者のあいだで批判の応酬があった。もっともキースは、この歌はアフガニスタン攻撃を支持する歌で、イラク戦争については自分は判断を保留すると述べたが、軍がイラクでもこの歌を大いに活用したのは本書にあるとおりだ。
巻頭の『夏の遺言』(Summer's Last Will and Testament)は、十六世紀イギリスの劇作家・風刺物語作家トマス・ナッシュの韻文劇で、擬人化された〈夏〉が年老いて遺言を述べるというもの。引用文は本書の内容とみごとに響き合っている。
本書の主人公とエミリーが犬を飼うところは、ジェリー・シャッツバーグ監督の映画『哀しみの街かど』(一九七一年)の麻薬に冒される若い男女を思わせる。若き日のアル・パチーノの出世作だが、犬のことはこの映画へのオマージュかもしれない。
映画といえば、本書は『アベンジャーズ』シリーズなどで知られるアンソニーとジョーのルッソ兄弟による映画化が決定している。彼らもクリーヴランド出身で、長編監督第二作『ウェルカム・トゥ・コリンウッド』はクリーヴランドの寂れた地区コリンウッドが舞台。おそらくこの小説への思い入れは熱く、作家性の強い作品になるのではないだろうか。今までにないタッチの戦争映画・青春映画になりそうで、とても楽しみだ。
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