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「借地」なのに巨額の相続税が! ドラマよりももっとドラマチックなことが起きるのが「相続」

「借地」なのに巨額の相続税が! ドラマよりももっとドラマチックなことが起きるのが「相続」

荻原 博子

『最強の相続』(荻原 博子)

出典 : #文春新書
ジャンル : #ノンフィクション

借地なのに地価高騰で「相続財産」が1億4000万円増!

『最強の相続』(荻原 博子)

 2人が父と最後に会ったのは、その年の正月でした。

 政志は、自分もそろそろ限界なので店をたたんで老人ホームに移りたいという計画を伝え、「今年がこの家で迎える最後の正月になるかもしれない」と、寂しそうに言いました。

 そんな父親の寂しさを紛らわせようと、兄弟とその家族は、みんなで賑やかな正月を過ごしました。

 その時、父がこんなことをこぼしました。

すぐそこに駅ができて、この辺は地価が高騰しとる。じゃが、わしんとこの店は借地で借りもんやさかい、どない地価が上がっても関係ないわ。わしにもっと甲斐性があったら、この店を買うて、お前たちにひと財産遺したったんやが。結局、わしの人生、ちっとの金が残っただけじゃった」

 酔って笑いながら、それでも上機嫌な様子でした。

 それから2カ月後、政志は急性心不全であっけなく帰らぬ人となったのです。

 父親が他界し、「相続」が発生したことで、雄一と健児の兄弟は、思いもしなかった事態に直面することになります。

 父が言っていたとおり、死後に父の預金通帳を見ると、確かに800万円ほどの預金があるだけでした。細々と理髪店を経営していた父は、そのお金で老人ホームに入居しようと思っていたのでしょう。

 しかし、それとは別に、政志は、莫大な財産を遺していたのです。

 それは、父が借りていた店兼住居の土地の「借地権」でした。

 実は、すぐ近くに新駅ができて地価が高騰したことで、この「借地権」が一緒に高騰していたのです。

 父親が「高騰しても、土地はわしのもんやないから、関係ない」と言っていたので、兄弟は借地のことについては何も考えていませんでした。

 ところが、税務署で話を聞くと、店のある土地の評価額が2億円以上なので、「借地権」でも1億4000万円くらいの評価にはなるだろうということでした。

【次ページ 「相続」すると税金で1人500万円の持ち出しに】

文春新書
最強の相続
荻原博子

定価:880円(税込)発売日:2020年02月20日

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