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アナーキック・エンパシー  他者の靴を履くための考察

アナーキック・エンパシー 他者の靴を履くための考察

文:ブレイディ みかこ

文學界4月号

出典 : #文學界

「文學界 4月号」(文藝春秋 編)

 とはいえ、わたしが語学学校に通ったのはもう二十数年前のことなので、すっかり忘れてしまった二つの言葉の意味の違いをもう一度辞書で確認してみることにした。

 

 エンパシー(empathy) ………

 他者の感情や経験などを理解する能力

 シンパシー(sympathy)………

 1.誰かをかわいそうだと思う感情、誰かの問題を気にかけていることを示すこと

    2.ある考え、理念、組織などへの支持や同意を示す行為

    3.同じような意見や関心を持っている人々の間の友情や理解

(『Oxford Learner’s Dictionaries』のサイト oxfordlearnersdictionaries.comより)

 

 英文は、日本語に訳したときに文法的な語順が反対になるので、エンパシーの意味の記述を英文で読んだときには、最初に来る言葉は「the ability(能力)」だ。

 他方、シンパシーの意味のほうでは「the feeling(感情)」「showing(示すこと)」「the act(行為)」「friendship(友情)」「understanding(理解)」といった名詞が英文の最初に来る。

 つまり、エンパシーのほうは能力だから身につけるものであり、シンパシーは感情とか行為とか友情とか理解とか、どちらかといえば人から出て来るもの、または内側から湧いてくるものだということになる。

 

この続きは、「文學界」4月号に全文掲載されています。

文學界 4月号

2020年4月号 / 3月6日発売
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