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紀行 八戸滞在日記

紀行 八戸滞在日記

文:滝口 悠生

文學界4月号

出典 : #文學界

「文學界 4月号」(文藝春秋 編)

 店を出ると小雨。八戸ブックセンターは公営の書店、つまり八戸市が運営する書店で、佐藤さんは開店前の起ち上げからかかわっているのですっかり書店員さんのように思ってしまうが、元は別の部署にいた市の職員さん。花子さんは開店に合わせて八戸に移住したプロの書店員さんで、それまでは東京の書店に勤務していた。花子さんはイラストレーターでもあり、ブックセンターの刊行物などにもかわいいイラストを描いている。車中で、今年は八戸も寒さがそんなにきつくないこと、しかし来週は大寒波がくるらしく、イベントが今週でよかった、という話などする。今回の八戸滞在はブックセンターでの展示とそれにかかわるイベントなので、移動の車も八戸市の公用車。年代物の黒塗りのクラウン。その車体の角ばり。

 八戸は海に面し、新幹線の停まる八戸駅は中心より南にある。そこから市役所やブックセンターのある中心街を通って北側に行くと沿岸部に工業地帯が広がっている。そのなかでもひときわ巨大な敷地面積をもつのがこれから向かう三菱製紙八戸工場で、工場に近づくにつれ、敷地内にある茶色い大きな山が見えてきた。砂山みたいだがそれは紙の原料のチップの山で、ショベルカーがひっくり返りそうな角度でその急な斜面をのぼっていた。高さはまちまちだが、大きいのでたぶん十五メートルか二十メートルくらいあるのではないか。

文學界 4月号

2020年4月号 / 3月6日発売
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