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連続テレビ小説「エール」のモデルになった古関裕而、その80年の生涯とは

連続テレビ小説「エール」のモデルになった古関裕而、その80年の生涯とは

辻田 真佐憲

『古関裕而の昭和史』(辻田 真佐憲)

出典 : #文春新書
ジャンル : #ノンフィクション

『古関裕而の昭和史』(辻田 真佐憲)

 作曲した校歌は全国各地に散らばり、そのなかには、皇宮警察学校、ソウル日本人学校、河合塾などの名前もみえる。社歌は、先述した山一証券だけではなく、東北電力、東宝などこれまた多岐にわたった。

 五〇〇〇曲という作品数は、じつはひとつずつ数え上げられたものではない。ただ、そういわれても否定できないほど、古関の作曲活動は旺盛だった。

 では古関は、いつの時代にもいる、在野の「なんでも屋」だったのだろうか。いや、そうではない。昭和に活躍したということがなによりも重要である。

 どの国や文明にも、永遠に参照されるべき黄金時代がある。ここでいう黄金時代とは、よくも悪くも、その国や文明が大暴れした時代のことだ。スペインであれば、無敵艦隊が活躍したころだし、イギリスであれば、ヴィクトリア朝だろう。古代のローマ帝国や、チンギス・ハンのモンゴル帝国などもそれにあてはまる。

 その例にならえば、日本の黄金時代は昭和といってまちがいない。政治的にも、経済的にも、軍事的にも、日本があそこまで世界に影響を及ぼした時代はなかったし、今後もまた望みがたい。昭和の日本は、教訓の尽きせぬ泉として、小説やアートの豊穣な素材として、また回帰すべき理想像もしくは反面教師として、今後も特権的に言及されつづけるだろう。

文春新書
古関裕而の昭和史
国民を背負った作曲家
辻田真佐憲

定価:1,045円(税込)発売日:2020年03月19日

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