
古関は、そのような時代にあって、あらゆる大衆音楽を手掛けた、唯一無二の存在だった。名前こそ教科書などではほとんど触れられないものの、その音楽はしっかりとあらゆる分野で根付き、浸透している。
その頂点に君臨するものこそ、「オリンピック・マーチ」にほかならない。一九六四年の東京オリンピックは、経済大国日本の成人式だった。同種のイベントはふたたび行われても、あの輝きは二度とは訪れない。古関は、当時まだ存命だった山田耕筰、古賀政男、服部良一などをしのいで、その入場曲を作曲したのである。
にもかかわらず、古関の生涯はよく知られていない。既存の評伝も、その幅広い仕事をかならずしも十分に捉えきれていない。
では、この昭和史を奏でた作曲家は、いかなる人物であったのか。なぜこれほどまでの作品を残すことができたのか。そしてその作品は、昭和史でいかなる役割を果たし、今日にどのような影響を及ぼしているのか。本書の解明すべき課題はこれである。
(「はじめに」より)
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