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「今村夏子が描く世界は、まさに予測不可能」――最新刊に反響続々!(前編)

『木になった亜沙』(今村 夏子)

『木になった亜沙』(今村 夏子)

ジュンク堂書店名古屋栄店 西田有里さん

亜沙の手から誰も食べない。両方の腕にたくさんの甘い実をつけた木になりたいと願い、目が覚めたら木になっていた。割り箸になってやっと願いが叶う。七未は的にされてものを投げつけられても当たらない。やがて自分のこぶしを頬にあてるようになり「当たりたい欲」が叶わずに的屋の的になる。社会から受け入れられない者たちの悲しみ、救われなさ、死や絶望を超えた異形となってから叶う切なさに胸が苦しくなりました。物語の中からマイノリティな存在の生き辛さを感じました。

丸善名古屋本店 竹腰香里さん

亜沙から手渡された食べ物を、何故か誰も食べようとしない…。その手があまりにきれいすぎて、という理由により拒否されてしまう切なさ。木に生まれ変わった亜沙が、ついに自分の想いが叶った時、亜沙の嬉しさが伝わってきて泣けました。叶えてくれた若者とのあのラストシーン。あっ!と驚愕しつつも、あれで良かったのかもしれないと複雑な気持ちになりました。純粋なものたちの愛の物語です。

名古屋みなと蔦屋書店 藤原彩香さん

悲しすぎるくらいにことごとく自分の手から食べてもらえない亜沙の手を先生が「逆です、きみの手は、きれいすぎる」と言ったように、赤ちゃんもまた汚れを知らないきれいな存在だから亜沙の手がきれいすぎることなんて関係なくミルクを飲んだのだなと感動すら覚えました。ラストシーンは、悲しいことのように思えるけれど、亜沙たちの立場になって考えてみると、結果的には良かったことのように思えて胸がすっとしました。

正文館書店本店 鶴田真さん

他人から大事にされなかった辛さや、やるせなさが積み重なっていく中でも、私の手から食べて欲しいと思い続けて、ついには木になってその願いを叶えた亜沙の真っ直ぐな気持ちに情念のようなものは感じられない。その一心に思い続けることの現実社会での難しさが印象に残り、この世はかくも真っ直ぐ生きることが難しいのかという思いを抱き、深く溜息をついた。

TSUTAYA佐鳴台店 貝塚知香さん

このやるせなさをどう言葉にしたらいいだろう。悲しい、とも、かわいそうとも違うこの読後感。できれば他の結末であってほしかった。次に生まれ変わった時には亜沙たちが報われますように。亜沙の手が清潔すぎず、汚れきったりもしませんように。

富士江崎書店 内山さん

展開がよめず思わず引き込まれました。

木になった亜沙今村夏子

定価:本体1,200円+税発売日:2020年04月06日


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