書評

「津波監視システム」を実現せよ! 変動帯に生きる日本人必読の理系小説

文: 巽 好幸 (神戸大学海洋底探査センター教授・センター長)

『ブルーネス』(伊与原 新)

『ブルーネス』(伊与原 新)

コンテクスト

 このダイナミックな作品について語るためには、まず私のことを記しておく必要があるだろう。「マグマ学者」を自称する私は、地球内部が融けてできるマグマが地表に噴き出して冷え固まった岩石の微(かす)かな呟(つぶや)きに耳を傾けてきた。そしてその呟きを翻訳することで、46億年にも及ぶ水惑星地球の歴史や、地震や火山が密集する「変動帯」日本列島の営みを紐解いている。また私は2012年に神戸大学へ赴任する前の12年間、作品では「海洋地球総合研究所(MEI)」と称される海洋研究開発機構(JAMSTEC)で、「ウミツバメプロジェクト」のリーダーである武智要介と同じ「プログラムディレクター」の職にあった。当時の部署の名前は、作品とよく似た「地球内部ダイナミクス領域(IFREE)」だった。加えて作品中の「東都大学地震研究所」は言うまでもなく東京大学のそれであり、ここは私が大学院時代を過ごし、今でも共同研究を行なっている所だ。したがって、この作品に登場する場所(入り口や廊下、それに部屋までも)、それにモデルとなったであろう人々は、ほぼ間違いなく認識できる。

ブルーネス伊与原新

定価:本体960円+税発売日:2020年04月08日


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