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「津波監視システム」を実現せよ! 変動帯に生きる日本人必読の理系小説

「津波監視システム」を実現せよ! 変動帯に生きる日本人必読の理系小説

文:巽 好幸 (神戸大学海洋底探査センター教授・センター長)

『ブルーネス』(伊与原 新)

出典 : #文春文庫
ジャンル : #エンタメ・ミステリ

『ブルーネス』(伊与原 新)

 私の記憶に誤りがなければ、伊与原新氏は大学院時代、地球磁場の発現時期とその強度変化を調べていた。現在の地球には僅かしか露出しない数十億年前の岩石にかすかに残された地球磁場の「化石」を丁寧に掘り出していたのだ。この研究は、地球の営みを探る最前線だった。何故ならば、地球磁場は「核」と呼ばれる地球中心の金属部分が対流することで作られ、磁場の変遷を知ることは、「火の玉地球」が冷却する過程での地球内部の冷却史やそれに伴うダイナミックな変動を知る上でとても重要なのだ。

 こんな地球科学のプロだった作者は、この作品を書くにあたり、主人公の行田準平くんと同じ地震研究所広報アウトリーチ室助教をつとめ現在は慶應義塾大学環境情報学部准教授の大木聖子さん、それに本作品の要である海洋ダイナモ効果を利用した新しい海底電磁場観測装置(ベクトル津波計)と自律型海洋プラットフォーム(ウェーブグライダー、作品中ではウミツバメ)の開発と運用・観測を行っている杉岡裕子さんと浜野洋三さん(以前はIFREEで、現在は神戸大学海洋底探査センターKOBECで同僚)に綿密な取材を行ったようだ。だから流石(さすが)に、サイエンス及びそれを取り巻く状況に関して完璧な内容となっている。

ブルーネス
伊与原新

定価:1,056円(税込)発売日:2020年04月08日

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