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「津波監視システム」を実現せよ! 変動帯に生きる日本人必読の理系小説

「津波監視システム」を実現せよ! 変動帯に生きる日本人必読の理系小説

文:巽 好幸 (神戸大学海洋底探査センター教授・センター長)

『ブルーネス』(伊与原 新)

出典 : #文春文庫
ジャンル : #エンタメ・ミステリ

『ブルーネス』(伊与原 新)

 杉岡さんや浜野さんたちは、2000年から地球の内部構造を明らかにする目的で太平洋に展開されていた高精度海底電位差磁力計のデータを解析して、海洋ダイナモ効果を用いた津波検知の研究を始めていた。そして2006年千島地震において津波による電磁場変動の検出に世界で初めて成功し、その後も津波の検出とその理論的解析を続けた。

 しかしこの観測では、一定期間海底に設置した装置を回収してデータを取り出す必要があり、リアルタイム観測は不可能だった。そこで彼女らは波力と太陽光で自律走行する「ウェーブグライダー」に通信機能を持たせた。そして2014年には仙台沖でリアルタイム観測の実海域試験に成功したのだ。

 さらに現在では、作品のモデルにもなった2013年以降噴火活動を続ける西之島においてもリアルタイム観測に向けた準備が進められている。作品で描かれたように、海洋由来災害の軽減に今後大きな役割を果たすものと期待できる。

日本列島を何度も襲った超巨大噴火

 作品でも取り上げられていたように、この国は地震大国であると同時に、世界一の火山大国でもある。ここ数年でも火山災害で多くの犠牲者がでた。さらに歴史を振り返ると、1792年に起きた史上最悪の火山災害「島原大変肥後迷惑」では、島原半島雲仙眉山(うんぜんまゆやま)の山体崩壊に伴う大津波で1万5000人の命が失われた。しかし100万年と言われる火山の一生からすれば日本の歴史などほんの一瞬。人間の尺度で火山の営みを計ることはできない。

 例えば、過去10万年間にこの日本列島では約10回の「超巨大噴火」が起きている。今この規模の噴火が起きれば、最悪日本列島のほぼ全域でライフラインはストップし、日本喪失につながる。その確率は今後100年間で約1%。この一見低そうに見える確率は、実はあの阪神淡路大震災の前日、1995年1月16日における地震発生確率とほぼ同程度なのである。

ブルーネス
伊与原新

定価:1,056円(税込)発売日:2020年04月08日

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