韓国には『反日種族主義』の主張に距離を置く学者や研究者が多い。ある研究者はこう話してくれた。
「韓国はどんどん言いたいことの言える社会になりました。1980年代の民主化で言論の自由が保障され、社会主義思想も解放されました。いまは、北朝鮮に対して好意的な意見でも批判的な意見でも、誰が何と言っても構いません。政府への批判も個人への批判も自由です。ただ一つだけ聖域が残っています。それは日本に対する発言です。過去もそうだったし、現在もタブーは続いています。下手に親日的発言をすれば、どのように社会から叩かれるかわからない。正直に言えば、日本を研究するものは自分の発言について、常時、自己検閲を掛けていると言ってもいいでしょう」
「反日」は至る所にある。韓国だけではなく日本の中にもある。
日韓はとても不思議な関係にある。韓国の古い親しい友人たちに会えば、凝り固まったわだかまりは一瞬にして消えてしまう。政治のレベルに必要な歴史を乗り越える日韓の新しい価値観は簡単には生み出せないが、日韓の人々はそれぞれの場所で格闘を続けているように思う。
韓国の若い世代には「反日」に対する疑問も出てきている。日本のアニメやゲームなどの文化に日常的に接している10代、20代は、政治的に作られた反日イデオロギーに直感的な疑問を持っている。これは日本側も同じである。韓国の化粧品やグルメ、K-POPなどに惹かれる若者は多い。
反日や嫌韓ではなく、等距離の対話ができる日を期待しながら、私はこの本を書き終えた。
(「はじめに」より)
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