IOCはなぜこのような姿勢を続けたのか。それは、IOCがオリンピック運動の担い手であると同時に、世界最大級のスポーツ興行主であり、映像コンテンツの供給者でもあるからだ。非政府組織(NGO)兼非営利組織(NPO)でもあるIOCは、そのいずれの面でも世界最大級の規模を誇る巨大組織である。日本人が無邪気に憧憬の念を抱く「平和の祭典」の担い手は、IOCの一面に過ぎないことを、新型コロナウイルス流行が図らずも明らかにした。同時に、日本政府や東京都、組織委が疫学的な根拠を示さないまま、ぎりぎりまで予定通りの開催に固執したことは、オリンピックが政治的な道具であることも示した。
ともあれ、延期は決定した。しかし、これから解決しなくてはならない問題は山ほどある。開催国である日本のみならず、世界中の観戦者が自ら感動の嵐に飛び込むオリンピックのメカニズムが今回は機能するのか。
IOC創設者のピエール・ド・クーベルタン男爵は、「もし輪廻というものが存在し百年後にこの世に戻ってきたならば、私は現世において苦労して築いたものを破壊することになるでしょう」と、オリンピズムが永遠ではないことを示唆する言葉を残している。
本書は新型コロナウイルス流行で露見したシステムやビジネスとしてのIOCの実情と、オリンピックを巡る動きを分析したものである。「感動の嵐」の中で己を見失うことのリスクに気づいた人のための「羅針盤」となれば幸いである。
(「まえがき」より)
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