本書の核となる挿画は、上述したように「クライマックス」だが、その直前のシーンは「踊り手の褒美」。処刑人の毛むくじゃらの腕が地下からにゅっと伸びて首を載せた盾を差し出し、サロメが流れる血に指をひたすシーンだ。この絵も有名作で、たまたま二〇一七年開催の「怖い絵」展(筆者が特別監修)で展示することができた。
己の意のままにならない男を斬首させ、その生首に接吻して恍惚を得るという常軌を逸した王女の行為、その極端にいびつな愛の形は、予想以上に来場者、とりわけ若い女性たちの関心を呼び、絵をプリントした布製バッグやマグカップは売り切れになったし、SNSなどでの発信もきわめて多かった。サロメもビアズリーも知らなかった人たちまでも虜にしたようだった。
原田さんは登場人物にこう語らせている。「ビアズリーの存在なくしては、〈サロメ〉はあれほどまでに話題にならなかった」。
まさしくそのとおりで、ビアズリーの猟奇的且つ耽美的な画風は異国の現代人にとってもなお新しく、胸をざわめかせることは、「怖い絵」展で証明済みと言えよう。
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