本の話

読者と作家を結ぶリボンのようなウェブメディア

キーワードで探す 閉じる
世紀末芸術を代表するふたりの天才 その禁断の世界に息をのむ

世紀末芸術を代表するふたりの天才 その禁断の世界に息をのむ

文:中野 京子 (作家・独文学者)

『サロメ』(原田 マハ)

出典 : #文春文庫
ジャンル : #小説

『サロメ』(原田 マハ)

 本書の核となる挿画は、上述したように「クライマックス」だが、その直前のシーンは「踊り手の褒美」。処刑人の毛むくじゃらの腕が地下からにゅっと伸びて首を載せた盾を差し出し、サロメが流れる血に指をひたすシーンだ。この絵も有名作で、たまたま二〇一七年開催の「怖い絵」展(筆者が特別監修)で展示することができた。

 己の意のままにならない男を斬首させ、その生首に接吻して恍惚を得るという常軌を逸した王女の行為、その極端にいびつな愛の形は、予想以上に来場者、とりわけ若い女性たちの関心を呼び、絵をプリントした布製バッグやマグカップは売り切れになったし、SNSなどでの発信もきわめて多かった。サロメもビアズリーも知らなかった人たちまでも虜にしたようだった。

 原田さんは登場人物にこう語らせている。「ビアズリーの存在なくしては、〈サロメ〉はあれほどまでに話題にならなかった」。

 まさしくそのとおりで、ビアズリーの猟奇的且つ耽美的な画風は異国の現代人にとってもなお新しく、胸をざわめかせることは、「怖い絵」展で証明済みと言えよう。

文春文庫
サロメ
原田マハ

定価:803円(税込)発売日:2020年05月08日

プレゼント
  • 『赤毛のアン論』松本侑子・著

    ただいまこちらの本をプレゼントしております。奮ってご応募ください。

    応募期間 2024/11/20~2024/11/28
    賞品 『赤毛のアン論』松本侑子・著 5名様

    ※プレゼントの応募には、本の話メールマガジンの登録が必要です。

ページの先頭へ戻る