今も昔も、ニューヨークへ行く人が最初に訪れる美術館はMoMAだ。私もそうだった。一九七〇年代末コロンビア大の大学院へ留学したとき、まず見に行ったのがMoMA。今は日本でもMoMAという愛称が定着しているが、当時はニューヨーク近代美術館を略してニューヨーク近美と呼ばれており、建物も小さく地味だった。
私がMoMAへ行った目的は、ピカソの〈ゲルニカ〉を見るためだった。そのときはまだMoMAに保管されていたのである。原田さんの『暗幕のゲルニカ』にもあるように、〈ゲルニカ〉はピカソが一九三七年のパリ万博のために、スペイン内戦時のゲルニカ無差別爆撃を主題として描いた大型絵画である。一九三九年、展覧会のためにアメリカに送られて各地を巡回した後にMoMAで保管され、第二次世界大戦勃発後もそのままMoMAに留まった。戦後はヨーロッパで何度か展示されたが、ピカソ本人がフランコ独裁を理由にスペインへの返還を拒み、結局四十二年間MoMAで保管され続けた。国際政治学専攻だった私は、反ファシスト運動のシンボルとして難民のように世界を流浪するこの絵に興味を持ち、ニューヨークへ行ったら絶対に見ようと考えていたのだ。そう、原田さんの世界と私の興味は大いに重なるところがあるのだ。
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