特集

対談 松浦理英子×濱野ちひろ 動物と人間は愛しあえるか?

文: 松浦 理英子,濱野 ちひろ

文學界6月号

対談 松浦理英子×濱野ちひろ 動物と人間は愛しあえるか?

犬や馬をパートナーとする動物性愛者=ズーたちを研究したノンフィクション『聖なるズー』が話題の濱野氏と、犬と人間の種を超えた交感を『犬身』で描いた松浦氏による、性の深淵に触れる初対談!


「文學界 6月号」(文藝春秋 編)

「種同一性障害」の人々

 松浦 濱野さんの『聖なるズー』をとても面白く読みました。動物性愛と、濱野さんご自身の性暴力体験から抱えることになった性愛にまつわる問題という二つのテーマがあり、どちらにも非常に切実な感じを受けました。

 濱野 光栄です。松浦さんの『犬身』は、私の研究と響き合うところが多くて驚きました。

 松浦 私はセクシュアリティ全般に興味を持ち、小説を通じて自分なりにセクシュアリティというものを考えてきました。しかし動物性愛に関しては、アダルトビデオ、ビザールビデオの中の見せ物としての性行為、あるいは異性がいない環境において代替行為として行われるものがほとんどだろうと認識していました。が、そうではなく、この本に出てくる方々のように真剣に、動物と性愛を含めたかけがえのない交わりを望み、可能な限り実践しようとしている人たちがいることは驚きで、目が開かれました。

 私自身は犬が特別に好きで、前世は犬だったんじゃないかと思っているんですが(笑)、犬との性行為を望んだことはありません。その一方で人間と人間のそばで暮らす動物、とりわけ犬と人間の間に通う特別としか思えない愛情はいったい何なんだろう、また犬と人間のふれあいの喜びは性的な喜びとどう違うのか、あるいは違わないのかということを考えて、『犬身』を書きました。

文學界 6月号

2020年6月号 / 5月7日発売
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