ということはだ……。電卓を取り出して計算する。安いワンルームマンションを借りれば、毎月の経費を五万円減らすのは十分可能だ。年間六十万円の節約は大きい。引っ越し費用に四十万円かかるとしても、家賃七万円なら六カ月で回収できる。狭い部屋だといまのように居心地が良くないだろうから、忙しくもないのに事務所に滞在することも減るに違いない。
経費が減り、自宅にいる日数が増える、一挙両得ではないか。なぜもっと早くその気にならなかったか不思議なほどだ。
さっそく調べてみた。月に三万円も出せば借りられるレンタルオフィスは、極端に狭い上、泊まれたとしても寝袋で床に転がる感じだったのであきらめたが、ユニットバス付きなら、六万円台から物件はありそうだ。一カ月遅れれば五万円ずつ損をする。そう思うと決心はすぐに固まった。
すぐにでも動きたいが、問題は荷物だ。もともと多くはなかったものの、六年もいればそれなりの量にはなっている。とくに本は、雑誌の在庫を含めると五千冊くらいある。狭い部屋には入り切らないし、松本にもスペースの余裕はない。
思い切って処分するか。本の中身は資料本だけでなく、捨てきれず持っていた古い雑誌なども含まれている。古本屋で欲しがる店もあるだろう。家具類はあれを捨てて、これを残して……。考え始めるとなぜか楽しくなってくる。
「用があって近所に来たので遊びに行く」とエミから電話があったのはそんなタイミングだった。いまは結婚して都心に住んでいるが、西荻でカフェギャラリーをやっていた独身時代からつきあいのある二十年来の友人で、妻とも仲がいい。
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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