- 2020.06.11
- 書評
超能力者でありながら、昭和の香り漂う人間味溢れる登場人物たちが魅力的
文:小橋 めぐみ (女優)
『増山超能力師大戦争』(誉田 哲也)
出典 : #文春文庫
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
この物語の世界では、超能力が科学的にも証明され、その存在が世間でも広く認知されているという設定だ。特に日本は、超能力の働きに大きく関わっている「ダークマター」という、広く宇宙に存在する星間物質の測定技術に秀でており、高性能な測定器の開発も世界に先駆けて成功を収めてきたという。このために超能力ビジネスは、科学技術と超能力者たちが手を組んで盛んになってきた。
この設定に、ぐっとくる。「科学では証明できないから」という理由で、世の中の超常現象と科学の相性は現実世界では、あまりよくない。それがタッグを組み、お互いが、お互いを必要としているのである。
「超能力者」という存在は認知されるようになったものの、そこには厳しい試験がある。日本初の超能力者団体、日本超能力師協会が年二回、試験を実施し、一級超能力師と二級超能力師を認定する。だれでも超能力者であるというだけで持て囃されるかというと、そうでもない。試験に落ちると「無能力者」と呼ばれ、周囲に馬鹿にされるという。ちょっとスプーン曲げができるくらいじゃ、ダメなのだ。超能力者でも落ちこぼれがいる。
更に、増山超能力師事務所がある場所が、六本木や青山ではなく、日暮里というのもいい。また事務所の建物が「ちょっとレトロな雑居ビルの二階」というのも味がある。デザイナーズマンションでも超高層マンションでもないのだ。
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