- 2020.06.11
- 書評
超能力者でありながら、昭和の香り漂う人間味溢れる登場人物たちが魅力的
文:小橋 めぐみ (女優)
『増山超能力師大戦争』(誉田 哲也)
出典 : #文春文庫
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
超能力が認められている以外、なんとも昭和の香りが漂っていることに、親近感が湧く。増山超能力師事務所の所員たちも、超能力者でありながら、何か欠けていたり、陰の部分をもっていたり、と人間味溢れる面々なのが、また魅力的だ。
所長の増山圭太郎は、すらりと背が高く、イケメン。「面倒くさい」が口癖だが、一番面倒くさいことは誰にも相談しないで、自分ひとりで背負い込もうとする硬派な一面がある。実際に会ったら、背中に哀愁が漂っているに違いない、そんな人物。
一級超能力師の住吉悦子は、美人で気が強い。かつては発火能力を乱用し、地元の不良を束ねていた過去をもつ。「川口の魔女」と呼ばれ恐れられていた、というローカル感にも惹かれる。
ただいまダイエット中で、テレパシーが得意なのが二級超能力師の中井健。
六年かけてようやく二級超能力師となったが、それをのぞいては典型的なダメ男、高原篤志。
スタイル抜群、ロングの茶髪をなびかせる美人のトランスジェンダー、宇川明美は、自分の超能力を制御できないことが欠点だが、以前と比べて少しずつ人間的にも成長している(対して、篤志の成長のなさも気になるところではある)。
そして経理を担当し、所員の中では唯一超能力をもたないが、誰よりも鋭い洞察力をもち、みんなのお母さん的存在の大谷津朋江。
いやもう、所員の方たちと飲みに行きたい、何かあったらここに駆け込みたい! と思うのは私だけではないはず。
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