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- 2020.06.11
- 書評
超能力者でありながら、昭和の香り漂う人間味溢れる登場人物たちが魅力的
文:小橋 めぐみ (女優)
『増山超能力師大戦争』(誉田 哲也)
出典 : #文春文庫
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
目の前で、ある超能力者に、スプーン曲げを見せてもらったことがある。みんなで静かに見守っていると、手も触れていないのにスプーンの柄から先が、ぽとりと落ちた。
「すごいすごい!」
と興奮気味に言うと、
「いや、自分は全然すごくない。イチローのほうがよっぽどすごい」
と、その超能力者は冷静に言った。
「『超能力』というネーミングがよくない、『超』がついてるから、すごいと思われがちだけれど違う言葉のほうがよかった。スプーン曲げができても、生きていくうえで何の役にも立たない」と。
じゃあ、どういう言葉がいいんだろうね? と、その時みんなで話しあったのだけれど、これだ! というものは出てこなかった。やっぱり「超能力」という響き以上にぴったりくるものはなかった。手も触れずにスプーンを曲げるなんて、努力の延長線上にはないからだ。
と、ここで、いや、そもそもそのスプーン曲げ、本物なの? 手品じゃないの? という突っ込みをしたくなった方もいるだろうけれど、その議論はここでは置いておこう。そのほうが何倍も『増山超能力師大戦争』の面白さを、味わうことができる。
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