- 2020.06.11
- 書評
超能力者でありながら、昭和の香り漂う人間味溢れる登場人物たちが魅力的
文:小橋 めぐみ (女優)
『増山超能力師大戦争』(誉田 哲也)
出典 : #文春文庫
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
前作『増山超能力師事務所』は連作短編集になっていて、増山率いる超能力師それぞれのメンバーにスポットを当てていた。超能力師といえど人間であり、様々な苦悩や葛藤があることを、軽やかに、ユーモラスに描いていた。その二年後の設定が今作『増山超能力師大戦争』である。今度は長編で、前作よりぐっとシリアスになった。超能力が世の中に認められ、それがビジネスとして盛んになっていくということは、こういう問題が起こりうるのだろうと思わされる。超能力関連の科学技術は国家レベルの重大機密情報となり、最先端の技術開発に携わっている人物に身の危険が迫ってくる、と。
さて、その「最先端の技術開発」とは何か?
なぜ、所員や家族にまで魔の手が迫るのか?
果たして黒幕は誰なのか?
話は少し逸れるが、私は小学生の頃、テレビ番組の企画で、外国にある超能力を研究する施設に行ったことがある。当時そこでは、六歳から十二歳までの子供には潜在能力として超能力が備わっていると考えられていて、その施設には同じ年頃の子供たちがたくさんいた。日本からは私を含め、小学生六人。主に、小さく丸めた紙を地面に置き、その紙の中に書いてある字を透視で読む、という実験だった。次々と当てていく外国人の子たちに対し、最初、私たちは誰も当てられなかった。それが二日目、三日目と透視実験を繰り返すうちに、日本の子供たちの中にも少しずつ正解者が出始めた。私は四日目に、ふいに紙から文字がぶわっと浮き出すように見え始めた。ああ、こうやればいいんだ、と体感で分かった。けれども日本に帰ってきて同じようにやってみても、二度と紙から文字が浮かび上がることはなくなってしまい、あっさり十二歳も過ぎた。