最近、飛蚊症が気になってきていて、壁をじっとみていると、康太郎さんが春の日射しだから気になるだけじゃないの、とにっこり言う。康太郎さんは緑内障で、片目の三分の一がみえないのだけれど、心配しても仕方が無いので、気にしない、とよく言っている。緑内障だとわかった日も、あーやだなあ、まあ仕事するか、と言って仕事し始めて、その図太さに感銘を受けた。
眼科に行こう、と思うけれど、いま病院に行くのは怖い。飛蚊症の検査は、瞳孔をひらくための目薬をささないといけない。それは基本的に共有の点眼薬で、いままでまったく気にしていなかったけれど、不衛生といえば不衛生だ。常在菌を交換し合って、いままで生きていたのにウイルスを避けようとすると、世界の全部が不潔で気持ち悪くみえる。もとから不潔なのが当たり前なのに。コロナにかかるのが怖いから死にたい、という人もいるんじゃないかと思った。夕飯は、残っていた昆布締めをわさびオイルであえて、わさび茶漬け。面倒くさくてべったら漬を鋏で切った。わさびオイルは鼻水がめちゃくちゃ流れて気持ちいい。専門家の会見をなんとなくきく。夜更けに、パリの関口涼子さんとオンラインチャット。二時間ほどおしゃべり。涼子さんはコロナで原稿依頼あいつぎ忙しいらしい。涼子さんは、外出規制のただなかにいてちょっと未来にいる人みたい。お花かっておいたほうがいいよー、ベランダにみどり置いておいた方がいいよー、おいしいお菓子買っておくといいよー、と言うので、ぜんぶその通りに行動した。
この続きは、「文學界」7月号に全文掲載されています。
-
『赤毛のアン論』松本侑子・著
ただいまこちらの本をプレゼントしております。奮ってご応募ください。
応募期間 2024/11/20~2024/11/28 賞品 『赤毛のアン論』松本侑子・著 5名様 ※プレゼントの応募には、本の話メールマガジンの登録が必要です。