小説『ラストライン』の第1作は、元々は週刊文春で連載されたものです。執筆にあたっての設定は、やはりキャラクターを優先しました。まず自分に近い年齢の人間を、それもただ攻めていくだけでなく、大きな流れにストップをかけられる防波堤になるような人間を書くことを念頭に置きました。だいたい、シリーズ物の主人公は、自分が先頭に立って、突っ込んでいくパターンが多いので、ちょっと珍しい人物造形かな、と。
自分は新聞記者だったサラリーマン時代、二足の草鞋を履いていたせいか、もしかすると人よりも強く定年を意識していたかもしれません。要するに「早く辞めてぇ」ということですが(笑)。
作家専業の今、定年は関係なくなり、ある意味、自分で決めるしかないですよね。まあ、体力・精神力の限界まで頑張るだけです。でも、小説は永遠に書いていたいですね。飽きるとは思えない。
小説家の場合は50代でも“仕上げ”の時期とは思いませんが、会社員としてのデッドエンドがあった当時の気持ちを妙に懐かしく思い出すのと同時に、「まだまだやれていないな」と悔いることもままあります。仕事人間としての総仕上げにかかる岩倉に、多少は自分の気持ちを投影しているのかもしれません。
とはいえ、岩倉の定年まではまだ間があります。シリーズを通しての大きな謎や、彼のプライベートを含め、書いていきたいことはまだまだたくさんありますね。
地方公務員の定年が正式に延びたら、シリーズのエンディングをどうしようかということも悩んでいます。定年が65歳になると、その分延びてしまいますしね。でも、岩倉はそれに関係なく60歳ですっぱり辞めてしまいそうな予感もします。
来年刊行予定の次の第4作では、おそらく彼は別の所轄に異動になります。まだ詳しくは言えませんが、ちょっとした仕掛けも考えていますので、楽しみにしていてください。
テレビ東京系 6月29日(月)20時~22時08分
ドラマスペシャル 堂場瞬一サスペンス
「ラストライン 刑事 岩倉剛」