インタビューほか

命は大事。だから死刑――「命の大事さを一番知っているのは遺族」

上谷 さくら

『死刑賛成弁護士』(犯罪被害者支援弁護士フォーラム)

『死刑賛成弁護士』(犯罪被害者支援弁護士フォーラム)

 たとえば、数々の事件を引き起こしたオウム真理教事件、大阪教育大学附属池田小学校で小学生ら23名が死傷した事件、インターネット上の「闇の職業安定所」で知り合った男3名が通りすがりの女性を拉致して殺害した闇サイト殺人事件などがあります。

 結成後も、強盗罪などを犯して刑務所に服役し、出所してわずか1カ月半の男が千葉大学の女子学生を放火のうえ殺害した事件、埼玉県熊谷市でペルー人が無差別に6名を殺害した事件、神奈川県相模原市の障害者施設で19名が殺害され26名が重軽傷を負った事件、新潟県新潟市で帰宅途中の小学生が殺害され遺体が線路に遺棄された事件などの被害者支援を積極的に行っています。

被害者は単なる「証拠品」

 実は、私たちのように被害者側の代理人をする弁護士はごく少数です。日弁連の中にあっては、「絶滅危惧種」と言っても過言ではありません。

 本来、理不尽な目に遭った被害者を救うのが「正義の味方」ではないか、と多くの国民が感じているはずですが、それとは反対にほとんどの弁護士は加害者の味方です。その理由は、現在の憲法や刑法、刑事訴訟法などの成り立ちと関わりがあります。

 憲法は、国のあり方や国民の権利と義務などを定めた最高法規です。現在の日本国憲法の条文は全部で103条ありますが、そのなかには、「弁護人依頼権」「黙秘権」などの加害者の権利がたくさん定められています。これは、戦前の明治憲法下で、自白を得る目的で拷問が行われ、冤罪が生じたことなどが根拠となっています。

 しかし、憲法には「被害者」という言葉は一度も出てきません。つまり、被害者は憲法上の権利が保障されていないのです。それどころか、被害者はつい最近まで全く権利を持たない、単なる「証拠品」として扱われ、取り調べの対象でしかありませんでした。

 しかも、1990年2月20日に出された最高裁判決は、「刑事司法は、公の秩序維持のために行われるものであり、犯罪被害者の受ける利益は反射的な利益に過ぎず、法律上保護される利益は認められない」と判示しました。「法律上保護される利益はない」と言って、被害者を刑事司法手続から完全に排除してしまったのです。

 このように加害者の権利ばかりが優遇され、被害者とその遺族はないがしろにされてきた現実がありました。そんななか、犯罪被害者の団体である「あすの会」の精力的な活動により、2004年に犯罪被害者等基本法が成立。第3条に、「すべて犯罪被害者等は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有する」と定められ、ようやく被害者の権利主体が明確に認められることになりました。しかし、被害者には未だに憲法上の権利はありません。そして、法律上の権利が認められて日が浅いこともあり、被害者の権利は様々な面で不十分であることには変わりがありません。

死刑賛成弁護士犯罪被害者支援弁護士フォーラム

定価:本体880円+税発売日:2020年07月20日


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