インタビューほか

命は大事。だから死刑――「命の大事さを一番知っているのは遺族」

上谷 さくら

『死刑賛成弁護士』(犯罪被害者支援弁護士フォーラム)

『死刑賛成弁護士』(犯罪被害者支援弁護士フォーラム)

 こうした経緯から、日弁連の体制も未来の弁護士を育てる司法修習生の授業も、加害者の権利を守ることに重点が置かれています。

 たとえば、司法試験では、被疑者・被告人の権利に関する問題はたくさん出題されますが、被害者の権利についてはほとんど問われません。出題されたとしても配点が低いので、間違えても合否に影響しない程度です。

 また、司法試験に合格すると、司法修習生という国家公務員に準じた身分を取得し、司法研修所という学校のようなところに通い、国から給料をもらいながら勉強を続けます。研修所の卒業試験に合格してようやく弁護士を名乗ることができるのですが、ここでも被告人の側に立って刑事事件の弁護をしなければならないという刷り込みを受けるのです。研修所では、履修する5科目のうち「刑事弁護」という科目があり、その名の通り刑事事件の弁護について勉強します。弁護士と一緒に身柄拘束された加害者に実際に会いに行って、弁護の方法を考えたりする「実務修習」もあります。

 ところが、「刑事弁護」はあくまで加害者を弁護するための科目ですから、被害者支援について考えることはしません。卒業試験では必ず、「被告人は無罪」という結論で答案を作成しなければならず、「有罪」という答案を書いたら不合格となり、弁護士にはなれないでしょう。

 そんな研修を受けた弁護士が刑事事件に関わるわけですから、被害者支援よりも加害者の弁護に熱心なのは必然なのかもしれません。また、弁護士会に新人として登録すると、刑事弁護の研修を義務づけられますが、被害者代理人の研修は義務ではないのです。つまり、弁護士が被害者支援をしようと志す機会自体がないということです。

 しかし、被疑者・被告人の権利擁護と被害者救済は両立するはずです。犯罪を認めている被疑者・被告人であれば、謝罪をして被害者に真摯に向き合えば、被害者の被害感情が和らぐこともありますし、それによって刑が軽くなる可能性もあります。犯罪事実を争っている事件であっても、被害者を侮辱したり貶めたりする必要はないはずですし、そのような訴訟活動は、裁判員や裁判官に嫌悪感を抱かせ、かえって刑を重くする事情になります。つまり、被害者の支援に目を向けずに行う被疑者・被告人の弁護は、本当の意味で彼らを救っていないのではないでしょうか。

死刑賛成弁護士犯罪被害者支援弁護士フォーラム

定価:本体880円+税発売日:2020年07月20日


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