現実が小説に追い付いてきた
──近刊の『四神の旗』では、コロナではなく天然痘でしたが、疫病によって藤原四兄弟が次々に斃れていく物語を書かれていますね。
馳 基本的にSARSやエボラウイルスもそうですが、人が経済活動を求め続けた結果として、アマゾンの密林やアジアの奥地でひっそりと暮らしていたウィルスが引っ張り出されてしまった。ウィルス自体には罪はないんです。かつて『光あれ』という原発のある町を書いた作品があるんですが、その後に東日本大震災が起こり、今回は藤原四兄弟を書いた後にコロナの大流行がありました。現実世界のそれが小説に追い付いてきたのは、決して意図したことではありません。が、だからこそ小説っておもしろい、という気持ちもあります。
──『不夜城』でデビューしたのは23年半前ですが、その直後に受賞できていれば本当はよかったのに、というお気持ちはありますか。
馳 何でしょうね……直木賞を獲るか獲らないかということで書いてきたわけではないし、今回はとても嬉しかったけれど、そのために書いたわけでもない。今まで受賞に届かなかったということは自分に未熟なところがあったからだろうし、今回の受賞はデビューから23年半頑張ってきたことが評価されたということでもあると思います。だいたい直木賞を獲るか獲らないかということを考えて書くような人は、小説家になってはいけないですよ(笑)。
(2020年7月15日、直木賞受賞オンライン会見より抜粋)
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