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「虐待事件の報道では、“実の父親”の存在が抜け落ちている」――『迷子のままで』(天童 荒太)

「オール讀物」編集部

Book Talk/最新作を語る

「虐待事件の報道では、“実の父親”の存在が抜け落ちている」――『迷子のままで』(天童 荒太)

『迷子のままで』(天童 荒太)

 天童荒太さんの最新刊『迷子のままで』には、虐待と震災をテーマにした2つの物語が収録されている。

「『永遠の仔』以降、虐待についてテレビ番組などの公の場で語ることは、もうタブーではなくなった、という認識が世間に広まったように思います。しかし、幼児虐待に関する報道にはずっと違和感を感じていました。なぜ責任を問われるのはいつも母親で、“実の父親”についてほとんど触れられないのか。シングルマザーであることや、内縁の夫がいることなど、母親の事情ばかりに注目が集まっている。実の父親の存在が抜け落ちていて、免罪されているようにも見えます」

 表題作「迷子のままで」は、虐待における“実の父親”の存在に焦点を当てた物語だ。主人公の勇輔は、恋人の妊娠がきっかけで、若くして結婚したもののすぐに離婚。子持ちの女性との再婚を考えている。そしてある日、前妻との実の子が虐待で亡くなったとの知らせが入る。だが、そんな衝撃的な事実を前にしても、勇輔はどこか他人事だった。

“性教育の排除”も影響している

「家庭環境が恵まれていなかったり、教育を受ける機会がなかった子は、“今この瞬間に”肯定されたいという切実な想いを抱えています。その肯定感をセックスに求めてしまうことが多く、妊娠の可能性まで考えることができない。人生を長いスパンで見ることができないのです」

 子どもが産まれれば、誰もが“自然に”親としての自覚が芽生えるというのは、幻想と言っていいだろう。

「親としての責任」、それは本来、大人が子どもたちへ教えるべきことであるが、今の日本は性教育に対して消極的だ。

「性教育とは、生命を守るための教育であり、幼児虐待といった悲劇を起こさないためのものであるはずなのに、政治家たちが『そういうことは自然と自分で覚えるものだよね』と、あたかもいやらしいものとして排除してしまった。その影響は、今でも尾を引いていると思います」


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