もちろん歴史を学ぶのは、役に立つという効能だけではなく、おもしろいというのが一番でしょう。僕は六〇年以上歴史の本を読みつづけていますが、まったく飽きることはありません。それどころか、いまでも「なるほど、そうやったんか」と日々新たな発見の連続です。史料の発見や文物の科学的な分析法が進歩したおかげで、古くなる「歴史の常識」も少なくありません。歴史は物語ではなく科学ですから、「エビデンス、サイエンス、専門的な知見」が何よりも重要です。今まで自分が「こうだったんやろ」と思っていた歴史上の常識が、きれいさっぱり塗り替えられたとき、むしろ僕は嬉しくなります。
歴史は面白くて役に立つ──そのことをより多くの人に知ってもらいたいと思っています。
ここで本書の成り立ちについて説明しましょう。この本は、二〇一九年一一月にオープンしたサイト「文藝春秋digital」で行った連載「腹落ちする超・歴史講義」をまとめたものです。毎月「マネー」「失敗」「リーダー」「大逆転」などのテーマを一つ設けて、読者からいただいた質問や編集者の疑問に、僕がその場で答えていくスタイルで進めました。事前に質問を渡されて、答えを用意するのではなく、その場のライブ感を重視しました。「ブレグジット」「新型コロナウイルス」「Black Lives Matter(黒人差別反対運動)」など、時事的な問題が起こるたびに、その背景を歴史的な視点から考えてみました。
歴史の本だから難しいと構えずに、気楽に手に取っていただければと思います。そして、興味を持ったテーマがあれば、書店で関連の書籍を手に入れて読んでみてください。僕もたくさんの歴史家やジャーナリスト、そして当事者の残した記録などを読んで、自分なりに勉強してきました。歴史を紐解くことで、自分なりのものの見方や、物差しが生まれるようであれば、これに勝る喜びはありません。
二〇二〇年一一月 APU学長 出口治明
(「はじめに」より)
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