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作家・辻村深月さんが高校生とのオンライン読書会で語ったこととは?

作家・辻村深月さんが高校生とのオンライン読書会で語ったこととは?

文:「オール讀物」編集部

「2020年のロマンス詐欺」読書会


ジャンル : #小説

 高校生からの質問に、辻村さんはひとつひとつ丁寧に答えていく。「耀太が事件を起こす動機は、最後には警察によって“ストレス”と一般化されてしまうが、そこに至るまでの彼の感情の描き方が非常に細やかだと思った」という感想に対して辻村さんは、「新聞記事などで報じられる事件の動機は、どうしても聞いたことがある、ありふれたものになってしまいがち。けれど、その奥には原稿用紙100枚を費やしても説明しきれない事情があるはず」と前置きした上で、「特別な人だけが犯罪の加害者になるわけではない。“いまより幸せになりたい”といった誰しもが持つ感情の延長線上に事件があり、皆さんのように普通に生きていると思っているはずの人が、ある日落とし穴に嵌まったように罪を犯すこともありうる。実際に経験したことはなくても、事件の背後に、誰しも身に覚えがある感覚があると小説で伝えられたら嬉しい」と述べた。

 小説は一つの新聞記事から始まる。「新聞記事のような紋切り型に見える言葉で事件の概要を記すことで、あえて最初に主人公は自分たちとは違う“おかしな人”だと思ってもらいたかった」と辻村さんは狙いを明かした。読み進めるにしたがって、耀太の抱えた事情が読者に伝わり、実は自分たちとそんなに変わらない青年ではないか、と考えさせる仕掛けになっているのだ。

 読書会の参加者には文芸部で活動するなど、小説を実際に書いている高校生も多く、小説を書くことへの具体的な質問も相次いだ。

「情景描写が綺麗だった。なにか秘訣は」という質問には、「風景を自然に描写できるようになったのは実はここ数年のこと」との驚きの答えが。デビューからしばらくは「描写しなきゃ」という意識があったが、キャリアを重ねるにつれ、登場人物に見える景色は「心と連動している」ことに気づいたという。辻村さんは高校生たちに身近な受験を例にあげ、次のように説明した。大学合格が決まった直後に見たキャンパスに向かう道ぞいの風景をいまでも鮮明に覚えているが、大学周辺の道の情景は4年間通っていたはずなのにその時の印象が一番強い。大変だった受験が終わり、この大学に通うんだという気持ちの中で目に入った風景だからこそ細部まで印象に残っているのだ――。このことがわかってからは、「主人公の心が動いた瞬間の景色を要所要所で描写すればいい」と、取捨選択できるようになったという。

「登場人物の名前はどうやって決めているか」という問いに対しては、「名前は親の希望が反映されていることが多い」と前置きしつつ、「“耀太”には明るくて輝きのある子に育ってほしいという願いがこめられているはず。特に、主人公が子どもだったり、主人公の親が登場したりする作品の場合には、親はどんな人なんだろうと想像して名前を付けている」と答えるなど、創作をする上で役立つ話が続く。

辻村深月​「2020年のロマンス詐欺」掲載

オール讀物2021年1月号

文藝春秋

2020年12月22日 発売

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