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飛鳥~奈良はヤマト、室町は足利 新しい「時代区分」の話をしよう

飛鳥~奈良はヤマト、室町は足利 新しい「時代区分」の話をしよう

保立 道久 ,加藤 陽子 ,小島 毅

『義経の東アジア』(小島 毅)

出典 : #文春文庫
ジャンル : #ノンフィクション

『義経の東アジア』(小島 毅)

小島 歴史と並行して神話や物語を研究してきた保立さんならではの視点ですね。

 地震の神格化というのは、中国では聞いたことがないので、興味深いです。ただ、地震という単語自体が中国製なように、中国でも古くから地震の記録は残っています。天変地異は人間界の事象に連動して起こるという天譴論(てんけんろん)の考え方から、王権への警告とみなされたからです。

 紀元一世紀、後漢のときにこの理論が完成します。ちょうど、倭国がはじめて朝貢して、有名な金印をもらったころです。

保立 三世紀初頭から邪馬台国と同時に始まる古墳時代も「神話」の時代と考えた方がよいです。古墳はいわば神話の物証だと思うのです。

 壺を横倒しにして埋めると、ちょうど前方後円墳の形になります。中国の「壺中天(こちゅうてん)」の説話ではないですが、死者の魂は壺の内部から、頸部を通って昇天していく。骨壺から白鳥の骨が一緒にでた例があります。ヤマトタケルが白鳥になったというのは魂が骨と一緒に飛んでいったのですね。骨は倭語ではカバネと読むのですが、古墳に葬られる身分の人は貴い骨をもっているというのが氏姓(うじかばね)制度なのです。

 この時代に明瞭に天の神が登場します。古墳は銅鐸とは違って天の神を祭るものです。その天の最高神がタカミムスヒという神であることを普通の日本人は知りませんが、本居宣長以来この神が高千穂への「天孫降臨」を指令した神であることが明らかになっています。タカミムスヒは「高きに座す火」という意味で、天から熱い火を放つ神、つまり雷神のことです。火山噴火の時には雷がなりますが、神話では噴火は巨大な雷神の力で起きるという訳です。これはギリシャ神話のゼウスなどと同じことです。

加藤 日本列島に住んでいた人々が、いかに自然現象を畏れ敬っていたかが伝わってきます。保立さんのお話では、日本の神話は火山と地震の神話だということですが、ふつう神話といえば、国家の起源を歴史的に正当化するためのものだと身構えます。でも保立さんは、まずは人々が自然界をどう見ていたかの表現として受け止めるわけですね。

日本は仏教国だった

保立 高校などで話すとスサノヲの名前さえ知らない子が多い。これは困ります。神話がどういうものか理解しておかないと、逆に次の「文明」の時代が意味づけられないからです。つまり、ほぼ六世紀、敏達(びだつ)天皇を最後にして前方後円墳が作られなくなります。これで「文明」期に突入します。それと同時に現在まで続く天皇家の血筋が初めて固定しました。いわゆる「万世一系」です。

 王権は権力基盤を西国に置き、東アジア文明を背負って西から東のベクトルで支配するようになります。私はこれを「西国国家」と呼んでいますが、「西国国家」の時代名称は単純に首都の地名でよいと思います。ですから、奈良盆地南部に都が置かれた六世紀半ばから、七一〇年の平城京遷都を経て、七八四年の長岡(ながおか)京遷都までは、ヤマト時代とします。

 私は敏達が「文史(ぶんし)」を好んだというのは老子や道教の教養だと思ってます。これが神話から「神道」への変化のきっかけなんじゃないか。

小島 「玄(げん)・儒(じゅ)・文・史」の四つは、中国の南朝で五世紀に重んじられました。倭の五王が朝貢したころの話です。このうち玄学は、老荘思想の系譜を引いています。一方、同じころ、老荘思想と神仙思想が融合して、道教が成立し、儒教・仏教とならびたちます。

 日本はというと、遣唐使時代には儒教も重視されますが、九世紀以降は圧倒的に仏教優勢ですよね。十五世紀に中国に派遣された室町幕府の外交使節も僧侶でした。日本はタイやビルマと同様に仏教国だったわけで、中国から見ると、南方の国という印象があったと思います。

文春文庫
義経の東アジア
小島毅

定価:1,540円(税込)発売日:2021年04月06日

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