「オール讀物」6月号が本日発売になりました。今月号の特集は、時代小説〈江戸の勇気!〉と〈松本清張賞〉。連載開始時から話題沸騰の髙見澤俊彦さんの「特撮家族」も第2話を掲載。亡くなった父の怪獣フィギュアのコレクションを巡って物語はどこへ進んでいくのか――ますます目の離せない驚きの展開が待ち受けています。
時代小説特集のテーマは〈江戸の勇気!〉。この企画のためにインタビューをお願いした、文庫書き下ろし時代小説の第一人者・佐伯泰英さんは、最新作の「照降町四季(てりふりちょうのしき)」シリーズでコロナ禍に見舞われた現代と江戸時代の厄災を重ね合わせ、そこから人々が再生していく姿を描きたいと話してくれました。まさに読んでいて「勇気」をもらえるのが時代小説の醍醐味。それを存分に味わえる読切7作品が掲載されています。
まず累計200万部を突破した、畠中恵さんの「まんまこと」最新作「たのまれごと」では、主人公の麻之助が新しい妻を迎え、旗本から持ちこまれた難題に挑みます。さらに冲方丁さんの「剣樹抄」や坂井希久子さんの「江戸彩り見立て帖」、奧山景布子さんの「『葵の残葉』余話」などの人気シリーズに加え、宮本紀子さんが初登場。昨年、第100回オール讀物新人賞を受賞した高瀬乃一さんも貸本屋を営むおせんを主人公に連作がはじまりました。直木賞受賞作『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』から続く、大島真寿美さんの「妹背山婦女庭訓 波模様」は遂に最終回を迎え、いずれも読みごたえ十分です。
松本清張賞特集では、第28回受賞作を発表。本年度の受賞者は21歳の大学生の波木銅さんで、5人の選考委員が「抜群のセンス」と絶賛、『万事快調(オール・グリーンズ)』の受賞が満票で決まりました。選評や受賞記念エッセイから、是非いち早くその才能にご注目ください。『インビジブル』で大藪春彦賞と日本推理作家協会賞をW受賞した坂上泉さんの短編「かげろいの望楼」ほか、村木嵐さん、額賀澪さん、千葉ともこさんによる力のこもった歴代受賞者競作もお楽しみいただけます。
松本清張さんにちなんだ3つのスペシャル対談は、北村薫さんと有栖川有栖さんが刊行60周年となる『砂の器』をめぐって、『赤の呪縛』を上梓したばかりの堂場瞬一さんと『警視庁科学捜査官』著者の服藤恵三さんが警察の科学捜査について、清張賞選考委員の中島京子さんと「八咫烏シリーズ」の阿部智里さんが戦争を書くことを存分に語り合いました。
そして今年35周年を迎えた夢枕獏さんの「陰陽師」は、残念ながら休載が続いていますが、夢枕さんご自身が「仰天・俳句噺」と題したエッセイを寄稿。70歳となった自らの作家活動を振り返りつつ、俳句創作へと向かった経緯を綴り、休筆せざるを得ない現在の状況を報告してくれました。夢枕さんのパワフルすぎる創作意欲に、全国の読者の皆さまからエールをいただければ幸いです!