<とにかく女がかっこいい! 米英仏のミステリー界が推す新鋭の長編登場>
『わたしたちに手を出すな』ウィリアム・ボイル
「これこれ、こういうのが読みたかった!」――女性キャラが大暴れするクライム・サスペンス『ババヤガの夜』で第74回日本推理作家協会賞の候補となった王谷晶さんにそう叫ばせた本書『わたしたちに手を出すな』は、米英仏などのミステリ・シーンが期待の新鋭として推すウィリアム・ボイルの本邦初紹介作品です。
主人公は女性三人。言い寄ってきた近所の老人を殴り倒し、「殺してしまった……」とパニックに陥って娘の家へ逃げる未亡人リナ60歳。そしてリナの娘の娘、つまり孫娘のルシア15歳。そしてその隣家に住むウルフスタイン、若い頃に60本以上の作品に出演したアラフィフの元セクシー女優。トラブルを抱えて娘に頼ろうとしたリナでしたが、そこへ襲来したのは巨大なハンマーを振りまわす殺し屋! なんと娘の愛人がマフィアの取引場所を襲撃、大金を奪って逃走したというのです。かくしてリナは孫娘を連れ、タフな隣人ウルフスタインの助けを借りて命がけの逃走を開始します。
王谷さんが解説に記した「とにかく女がかっこいいのだ」という言葉がすべてを物語っています。彼女たちは追手から逃げるだけでなく反撃もする。ハンマーを持つ殺し屋だけでなく、彼女たちにはそれぞれの人生にまつわる問題も抱えていて、それにも挑んでゆきます。すごい武器を持っているわけでもない女たちの共闘は、「まさにシスターフッドどまんなか」(王谷さん解説より)。そんな戦いの果てに待つのは、奇縁に結ばれた彼女たちが「ひとつの家族」として囲むテーブルです。ユーモアを漂わせつつ、最後にはあたたかな感動が待つ痛快なサスペンス。自信をもっておすすめします。
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