- 2021.11.02
- インタビュー・対談
劇場版「きのう何食べた?」公開記念 西島秀俊×梶芽衣子 母子役を演じたふたりの撮影秘話!
聞き手:関 容子
出典 : #オール讀物
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
「きのう何食べた?」で母子役を演じる西島さんと梶さん。
ドラマから劇場版へ、大ヒット作の舞台裏をふたりが初めて語ります。
関 西島さんが二〇〇七年に『遠き恋人に関する調査』というドラマに主演なさって、それが私の『日本の鶯(うぐいす)』という著書に関わるものだったので……。
西島 堀口大學さんのですね。
関 はい、若き日の大學先生が、画家で九つ年上のマリー・ローランサンと恋に落ちてそれが「遠き恋人」という話になる。
西島 僕はそれを検証しにパリまで行くジャーナリストの役でした。よく憶えています。ドキュメンタリードラマみたいな感じで。
関 あれからずっと西島さんに注目しておりますし、梶さんは『鬼平犯科帳』の素敵な密偵おまさ役を長らく演じていらしたので、そのお話も伺いたいのですが、まずはお二人が母と息子を演じた劇場版『きのう何食べた?』の話題から。
西島 『女囚さそり』とか『修羅雪姫』を見ていて、梶さんはすごい女優さんだなと思っていたんですが、今回ご一緒してみて、やっぱり思った通りの方でした。
梶 えーっ!? どんなふうに?
西島 『きのう何食べた?』の台本を読んで、まず内野聖陽(うちのせいよう)さんと話したことは、これは絶対に面白おかしくやることはやめようね、って。真剣に演じよう、と話し合っていました。それで梶さんにお会いしたら、最初に「私、これ真剣にやろうと思う。いくらでもコメディっぽくやれる本だけれども、私は真面目に演じて、それを見た人が滑稽に見えたり、悲しく見えたりするのは自由なんだけど」とおっしゃった。僕と内野さんが最初に確認し合ったことを、最初からポンとされたんで、やっぱりすごい方だな、と思いました。
梶 あの本を最初に読ませていただいた時、私の出番は電話のシーンで「カミングアウトしたの?」っていうセリフなんですよ。「あなた、さっさとカミングアウトしちゃいなさいよ」みたいな。私、あのお母さんのそこが好きでね。普通はなかなかそうはいかない。このひと言のセリフで、ああ、このお母さんを演じたい、と思いましたね。
関 それでいて、お正月に二人で来ると、ショックで、あとで倒れてしまったりするんですよね。
梶 そうなんですよ。そこらへんはやっぱり普通の母なんだけど、でもこのお母さんの好きなところは、息子を「そこまできっちり育て上げたわよ、私」という誇りを持っているところです。男として、弁護士としてちゃんと立派に自立してやっていますからね。
西島 そうなんですよね。本当に僕のイメージ通りの母親で。
梶 ちょっと孫の顔も見たいかな、とか、普通の母親みたいな思いもあるんだけども、でも、いいじゃないの、別に人格とは関係ないでしょ、私が理解してあげなかったら他に誰がわかってあげるの? みたいな発想でやってますから、楽にスッと入って行けました。
西島 いろんなものに媚びない、という梶さんのイメージ通りの母親でしたね。深夜の連続テレビドラマで、もっとコメディタッチの演じ方が求められたかもしれないのに。
梶 真剣にやればやるほど、見ているほうはおかしいのよ。俳優が泣きすぎると、見てるほうは泣けなくなるし。
そこはやっぱり西島さんと内野さんがみごとで、嫌みがないじゃないですか。この手のドラマで、爽やかさがあるとか、クスッと笑えるとか、こういう大人のドラマってあんまりないような気がしますよね。
でも最初に本を読んだとき、よくこれがテレビの企画に通ったな、と。
西島 本当にそうですよね。連続ドラマになって、好評でスペシャルになって、今回劇場版になったので、もう当たり前みたいになってますけど、イン前は不安もありました。
でも、梶さんが、これ絶対うまくいくから、ってオンエア前におっしゃってくださってたんですよ。
梶 だって友人たちとたまに会食するんですが、私の仕事には関心のない人たちばっかりなのに、『きのう何食べた?』をドラマ化する、西島さんのお母さんやるの、って言ったら、あら、それは見るわ、絶対見る、って(笑)。
西島 本当ですか。
梶 郵便局の私の担当の子なんて、早く映画が見たい、って。
西島 郵便局の方も(笑)。有難いですね。
関 内野さんは思い切り自由にケンジを演じて、西島さんのシロさんがそれを品よく抑えてますね。その絶妙な組合せが実にうまくいってると思いました。
西島 内野さんは隙あらば、もっと生々しい瞬間というのを作りたがるんです。主にアドリブで作りたがるんで、それを僕が抑えていくことでちょうどよくなるのかもしれません。お互いがうまく引っ張り合って成り立っているんですね。
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