第12回本屋が選ぶ時代小説大賞に満場一致で選ばれた、木下昌輝さんの『孤剣の涯て』の舞台は、大坂の陣の前夜。大御所家康が「五霊鬼の呪い」を被り、老境にあるかつての剣豪・宮本武蔵に呪詛者の探索が依頼された。愛弟子の死にこの呪詛者が関わっているとみた武蔵は、弟子の仇を討つため依頼を受け、密かに大坂城へ向かう――。
奈良県で育った木下さんは、幼い頃、大阪で町工場を営む祖父に連れられ、大阪城公園に隣接する京橋のツインタワーによく遊びに来ていたという。
「真田幸村のファンだったので、お城を眺めるのは好きでしたけど、今も昔も、心浮き立つ感じはしませんね。やっぱり大阪城って敗者の象徴という感じがするので。実家の町工場を手伝っていると、倒産したとか、夜逃げしたとか、そんな話ばかり身近に聞くんです。豊臣の敗北が他人事には思えなくなりました」
今回、「呪い」を通して大坂の陣を描くという壮大な試みに挑んだ木下さん。二転、三転する謎解きの面白さ、伝奇的なエンタメ性が選考でも高く評価された。
「さっそく本屋さんにお礼行脚に行きたいですね(笑)」
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