1923日1月25日生まれの作家・池波正太郎。『鬼平犯科帳』『剣客商売』『仕掛人・藤枝梅安』『真田太平記』などの多くの人気作品が、いまなお読者から愛され続けている。
そしてこの度、紀伊國屋書店新宿本店では『池波正太郎生誕100周年フェア』と題し、2階BOOK SALONで写真や複製原画展示をはじめ、様々な企画を展開している。「本屋が選ぶ時代小説大賞」の選考委員も務める吉野裕司副店長は、フェア開催の理由をこう語った。
「2022年初秋に、次年度の大まかなブックフェアスケジュールを考えていた時に、1月が池波正太郎さん、8月が司馬遼太郎さんという歴史・時代小説の二大巨頭の生誕100周年だと気づいてしまったんですね。2人の作品は学生の頃から好んで読んできていて、それが書店に就職した理由の一つでもあるのに、なぜ2人が同じ1923年の生まれって知らなかったのだろう――と己の迂闊さに呆れましたが、これに気付いた瞬間、1月と8月にお2人のフェアをやることは、自分の中で即決していました」
とはいえ、池波正太郎作品は普段からほぼフルラインナップで新宿本店の書棚には置かれている。特別な周年にふさわしい企画を探しているところで、『仕掛人・藤枝梅安』の新作映画が、2月と4月に公開されることを知った。そこで実現したのが、なんと主人公の梅安を演じる豊川悦司さんの店内放送! フェア開催期間中は、贅沢にも豊川さんの美声が館内に流れることになった(~2月28日まで)。
さらに文藝春秋や新潮社の協力により、数々の生前の秘蔵写真パネルをフェア会場や2階C階段ショーウィンドウで展示。「鬼平」や「剣客商売」のコミックも出版するリイド社から提供された、『雲霧仁左衛門』コミカライズの崗田屋愉一さん、『仕掛人 藤枝梅安』コミカライズの武村勇治さんによる、迫力満点の複製原画も飾られている。
「池波作品の魅力は大きく3つあると思うのですが、1つ目はフィクションとノンフィクションの絶妙な混ざり具合。〈草のもの(忍び)〉の存在がフィクションというわけではありませんが、当然史実には出てこない人々が、非常に生き生きと描写されている。小説だから許される創造性を楽しむことができます。
2つ目は人が完璧すぎないところでしょうか。(剣は)めっぽう強いのに女にだらしなかったり、鬼平も若い頃にはずいぶんやんちゃもしています。こんな主人公にだったら自分もなれるかもしれない――そう思えてしまう親近感が、池波さんの描くキャラクターにはある気がします。
3つ目は〈悪〉にもかかわらず、それが格好いいところでしょうか。雲霧仁左衛門しかり、梅安しかり……盗みや暗殺は当然、〈悪〉ですが彼らが主役になる。『人斬り半次郎』の登場人物たちも西南戦争の賊将でありながら格好いい。善悪は立場により変わりうるもの、そんな池波さんからのメッセージを感じます。ちょうど文春文庫の生誕100年記念帯にも、『ちょっと悪いことをしながら良いことをする。それが人間だ』と書かれていますね」
熱く語る吉野副店長の〈池波作品のベスト3〉は、
(1)『真田太平記』ほか、真田関連、たとえば『真田騒動』など
(2)『忍びの風』ほか、於蝶シリーズ、たとえば『蝶の戦記』など
(3)『人斬り半次郎』
皆さんも『池波正太郎生誕100周年フェア』で、ぜひお気に入りの池波作品を見つけてください。
※「本の話」ポッドキャストでは、「オール讀物」編集部が語る「祝・映画化。豊川悦司と片岡愛之助が『仕掛人・藤枝梅安』で魅せる!」もお聴きいただけます。
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