明治以来、日本には、無私の人、潔い人、天晴れな人──、ひと言で言うと「美しい日本人」が数多くいました。

　そうした人々の生き方や考え方を知ると、そうそう、日本人ってこうだったんだよなあとしみじみ胸に迫るものがあります。歴史に名を残さないまでも、こうした日本人は市井にたくさんいたはずです。

　ましてや、殖財と私利私欲に走る人たちのニュースが連日のように報じられる昨今にあっては、そんな“偉人”たちの足跡に触れれば、痛快な思いがしたり考えを改めたりすることもあるのではないでしょうか。“偉人”の人生は、ときとして我が身を映す鏡にもなるのです。

　本書では、これまでに「文藝春秋」で記事になった数百人の人物のなかから、「美しい日本人」七十三人を厳選しました。

　その分野は政官、国際社会、企業、文芸、学問、芸能……と多岐にひろがっていて、ときにその恩恵は、現在の私たちにも及んでいます。文芸や芸能の分野であれば、より多くの国民がその愉しみを味わったことでしょう。

　本書が読者諸兄の人生と思考にとって、良き一助になれば幸いです。

編集部

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「はじめにより」