- 2024.12.20
- 読書オンライン
ふたりあわせて166歳! 80代の現役医師夫婦がすすめる“健康長寿食”「ここ10年は『一日一膳』が叶うお弁当を…」
家森 幸男
『80代現役医師夫婦の賢食術』(家森 幸男)
世界25か国61地域での研究から健康長寿食を提案する家森幸男氏は、現在85歳の研究者。妻の百合子氏は81歳で小児科開業医だ。ともに京都大学医学部で学び、今も現役で活躍されている。
ここでは、家森氏の新刊『80代現役医師夫婦の賢食術』(文春新書)から、家森夫妻の対談を一部抜粋して紹介する。健康長寿食を実践する、おふたりの日常とは?
◆◆◆
家森幸男(以下、幸男) 私の研究では、一日一食でも大豆や魚などを使った適塩の食事に変えるだけで、健康効果のあることが分かっています。これは実にすごいことで、その結果が出るたびに家内にも伝えましてね。
家森百合子(以下、百合子) 会話と言えば「この料理は何がええ」という話ばかりで(笑)。そのうち買い物へ行っても、これはいい食材、これはダメって、すぐ分かるようになって。私が代わりに講演できそうなくらい健康長寿食に洗脳されました。
「一日一膳」が叶うお弁当
幸男 おかげさまで、ここ10年は「一日一膳」が叶うお弁当を毎日作ってくれてね。「まごわやさしい」の食材が全部入っている。ありがたいし、よくやってくれています。
百合子 夕飯に健康長寿食をと思っても帰りが遅いから、お昼に摂ろうと思って。二段重ねのお弁当箱で、そのうち一段は定番おかずを詰めます。キャベツなどの野菜に、大豆をはじめとした豆類。それにエビやホタテなど魚介にきのこの蒸しもの。
これで「ま(豆)」「や(野菜)」「さ(魚介)」「し(しいたけ・きのこ)」が摂れ、もう一段は「ご(種実)」のごまをどこかに使って、「わ(海藻)」はワカメやとろろ昆布。あとは「い(いも)」を入れたり、卵焼きや鶏肉、焼き魚を入れたり。
幸男 毎日全部で30品目くらい? 卵焼きの中にもいろんな野菜が刻んで入れてあったりね。
百合子 だから2人分を作って詰めるまでに2時間! しかも主人はそのお弁当を毎日欠かさず写真に撮って、何が入っているかも細かい字で手帳に全部、書き留めてはる。どんなときも研究者やって思うてます(笑)。
自分のデータを知ることが大切
幸男 いつ何どきも無駄にはできません(笑)。私はお弁当を待つ間に血圧や体組成、腹囲を測ってセルフチェックの時間にあてています。
以前、ブラジルで魚や大豆などの成分を食べてもらって、血圧やコレステロールの変化を調べる実験をしたことがあって。半数の人に血圧計を、残りの人に体組成計を渡したんです。すると、血圧が一番早く下がるのは血圧計を渡した人、コレステロールが一番早く下がるのは体組成計を渡した人だった。セルフチェックで早く効果が表れる。自分の体を知ることはこれほど大事なんです。
百合子 「知る」「続ける」は本当に大切やね。私はお弁当を作り終えたら30分ほど、近所をウォーキングします。よく、「ご夫婦で一緒に歩かないの?」って聞かれますが、お互いに歩くスピードが違いますから。昔は私が主人の後ろをついて行ったけれど、最近は私のほうが速い(笑)。無理してハァハァいいながらでは体によくないでしょ。
ウォーキングのコツ
幸男 私のウォーキングは通勤で「インターバル速歩」の「ゆっくり」と「さっさか」の歩きを交互にね。
百合子 あごを引いて歩くと全身に力がグッと入って、大股でしっかりと歩けるの。体ができるだけ左右に揺れないように、上下にリズミカルに歩くのがコツかしら。
幸男 歩く姿勢は大事です。
百合子 仕事をしたり荷物をもったりすると、背中もつい丸くなりがちでしょう。だからお腹にぎゅっと力を入れる。そうすると全身の筋肉が働いて姿勢がしゃきっとするの。
幸男 かかとから踏み出して、しっかり歩くことですね。
京大馬術部での出会い
百合子 私達が出会ったのは、もう60年以上も前、京大の馬術部ね。私が浪人していた時、京大探検部が南極に行き、山岳部がヒマラヤに登頂し、馬術部がオリンピックに出るなど活躍してたんです。だから、入学後の部活選びのアンケートに「一番 探検部、二番 山岳部、三番 馬術部」って書いて出したら、馬術部の主将だった主人が一番最初に会いに来た(笑)。
幸男 実は私は小さい頃に、肺炎が悪化して膿胸で死にかけたことがあったんです。その時にドイツの新薬を使って救ってくれた医師がいて。それが家内のお父さんだったんです。
母からそう聞いていたので、「命の恩人の娘さんが馬術部を希望している」と会いに行ったんです。
百合子 私はそのことを知らないまま偶然、馬術部を希望していて。
共働きには抵抗がなかった
幸男 馬術部って、24時間体制で馬の世話をしなくてはいけない厳しい部だから、女性が入部してもなかなか長続きしなかったんです。けれど家内は違っていた。ある日、宿直室のボロボロの布団を家内が一生懸命繕っている姿を見て、彼女と結婚しようと心に決めました。
百合子 私はこの人の誠実な人柄と研究への熱意に魅かれて。馬術部では、5分の1くらいの部員が落第するのに、主将を務めながら医学部を首席で卒業したのがすごかった。
幸男 私が大学院を出て、彼女が医学部5年生の時に結婚しました。卒業後すぐ長女が生まれてね。
百合子 当時は学生運動が盛んで授業がよく無くなったから、その隙に次女を授かって(笑)。3人目はアメリカで生まれました。帰国後は非常勤の医師に。女性が外で仕事をすることが珍しかった時代だったけどね。
幸男 私の母も家庭裁判所の調停委員や学校の先生をしていたから共働きには全く抵抗がなかったかな。
妻に代わって健康長寿食を料理
幸男 今は夫婦で京都に住みながら仕事をしていますが、あなたが10年ほど前に発達症児専門のクリニックを開業してからは、私より忙しい日が多くなってきたね。
百合子 そうね。私のほうが帰宅が遅いこともあるから、代わりに料理を作ってくれることもあるわね。
幸男 世界の長寿食を見てきた結果、蒸し料理がいいと分かってますから実践中です。電子レンジでチンするだけでできます(笑)。
百合子 蒸し料理や適塩がいいとか言うてても、自分で調理してみないと本当のことは分からへんよ、って私がそそのかして(笑)。
幸男 ハワイの長寿の日系人が、ラウラウなどの蒸し料理で塩分を使わずにおいしく肉などを食べていたのからヒントを得ましてね。蒸すと食材の味が凝縮されて、塩が少なくてもおいしくなる。
先日は、ウイグル族の炊き込みごはん「ポロ」にヒントを得て、大豆を原料にしたお米状の大豆ライスに、野菜と冷凍の魚介類を加え、塩は使わずに電子レンジで炊き込みごはんを作った。研究の成果を自宅でも活かしています。
食塩を使わず、じゃこやかつお節で調味
百合子 主人は電子レンジ専門ですが、私は蓋つき鍋を使うことが多いです。加熱したらできあがり。毎日の弁当用の料理では、食材から出た水分は取っておき、カレーに使ったりしています。魚介の旨味や野菜のエキスが入っていますから。
幸男 そうそう。野菜のカリウムが入った出汁です。塩の害を打ち消す成分を捨てるのはもったいない。
百合子 私は食塩をほとんど使わず調理します。食卓に醤油も置いていないし。エビやホタテなど冷凍の魚介類や、じゃこやかつお節を常備しておいて、それを野菜と一緒に調理する。すると、魚介から出る塩分で、塩がなくてもほどよい加減で調味できるんです。強い味つけに慣れてしまっていたら、その薄味は分からないかもしれません。でも試すと、あっという間に慣れますよ。
幸男 魚介類は長寿栄養素のタウリンも多いから、一石二鳥やしね。
百合子 じゃこは小さいけど、骨も内臓も全部食べられるし、いつも冷凍庫に入れて塩代わりに使ってますね。魚介以外によく使うのは、鶏のささみ。そのまま焼いて、裂いて和えたり、最後に香味野菜をのせてごまを振ったり。
ヨーグルトには種類豊富なトッピング
幸男 ハワイでも香味野菜やごまをうまく使って減塩していました。鶏肉は、長寿食である地中海食でもよく食べられている食材だった。
百合子 豚肉も使うけど、脂はハサミでチョキチョキ切って取り除いてからね。牛肉はどうしても脂肪分が多いからあまり使わないかな。
幸男 朝食は、毎日、手作りのカスピ海ヨーグルトにいろんなナッツやドライフルーツ、きな粉など、なるべく「まごわやさしい」食材を多く入れて食べています。
百合子 ヨーグルトに入れるものをいつもたくさん買ってくるわよね(笑)。繊維やカリウムが豊富なバナナは毎回必ず入れている。
夫婦の会話はLINEで
幸男 私は今も出張や講演、学会での発表や論文執筆で毎日忙しくしています。だから実はこうゆっくりと夫婦で話すのは珍しくて(笑)。
百合子 研究の話は止まらないほど喋り続けるけれど(笑)。
幸男 まだ学会では発表できないけれど、分かってきた情報はついつい得意になって話してしまう。たとえば、日本人に極度な肥満が少ないのはなぜか。WHOの統計で、日本は191の国や地域中、182番目という少なさなんです。
その理由の一つは大豆、そしてもう一つはおそらく魚です。2000年代の初めに動物実験で、赤身の魚に多いヒスチジンというアミノ酸が食欲を抑えることを文教大学の中島滋学長が報告されたのを、私たちの世界健診のデータで疫学的に証明したことなど、そういう結果を論文にまとめる前に話したくなるんです。
80代で使い始めた「電子カルテ」
百合子 私もクリニックでは喋りっぱなしなので、家でそう多く話さないかも。それより現役で働いていると、覚えなくてはいけないものが次々に出てきて。
最近大変だったのは、電子カルテ。80過ぎには難しすぎる。でも、デジタルに詳しい若者に「教えて」ってお願いすればやさしく教えてくれる。そうやって、講演で使う動画の編集も自分でできるようになったし、人間って必要に迫られれば、いくつになっても何でもできるものですね。そういう意味でLINEは便利。
夫婦の会話はLINEのお陰で増えたかな。お互いに言いにくいことがあっても、文字だと伝えられることもあるしね。
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